海外テニス

【雑草プロの世界転戦記9】ヨーロッパのテニスアカデミーはこんなところ! 規模によって違う練習環境<SMASH>

市川誠一郎

2023.02.01

市川選手(左から3人目)が1年間練習したスペイン、バレンシアの中規模テニスアカデミー。家族的な雰囲気のあるアカデミーだったという。写真提供:市川誠一郎

 25歳でテニスを始め、32歳でプロになった市川誠一郎選手は、夢を追って海外のITF大会に挑み続ける。雑草プレーヤーが知られざる下部ツアーの実情を綴る転戦記。

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 ヨーロッパで活動するテニス選手は、どんな環境で練習していると思いますか? 基本的には「テニスアカデミー」と言われる場所に所属することが多いですが、他にも色んな形態があります。今回から数回にわたり、ヨーロッパの練習環境について書いていくことにします。

 日本では高校、大学と部活動文化があり、体育会からもプロ選手が生まれていますが、ヨーロッパには中高の部活文化はありません。アメリカには世界中から選手が集まる大学テニスが多くのプロを輩出しますが、ヨーロッパではイギリスなどに多少大学テニスはあるものの、高いレベルのそれは存在しません。

 日本人選手がヨーロッパに拠点を移す場合も、ほとんどの選手はアカデミーに在籍します。しかし日本人にもおなじみの有名アカデミーは、飛び抜けたトップ選手集団と海外の裕福な選手、また外国人ジュニアをサマーキャンプに呼ぶことなどに特化したところが多く、現地人選手は意外に少ないのが実情です。

 ヨーロッパの選手は、日本で知られるような大型アカデミーではなく、より細やかな関係を築ける小規模アカデミー、あるいはアカデミーとも言えない規模のチーム、グループで練習する選手が多いですね。プライベートコーチと契約して取り組む選手も日本よりはかなりたくさんいます。
 
 ではアカデミーにはどんな環境が用意されているのか? 基本的にはジュニアとプロ選手を対象に、毎日午前と午後1.5時間程度ずつの練習、トレーニングなどが、1週間のスケジュールとしてパッケージになっています。

 原則としてアカデミーが毎日のスケジュール、練習相手、担当コーチを全て決め、選手はそのスケジュールに従って過ごしていきます。中規模以上のアカデミーだと、練習だけでなく、身体のケアやメンタルカウンセリングなどが揃っているところも少なくありません。

 そういう中規模以上のアカデミーでは、海外からの選手を受け入れるための寮、レストランなどの揃った宿泊施設を備えていたり、少し規模の小さいアカデミーなら近くのアパートを借り上げていたりしています。

 アメリカのIMGやスペインのナダルアカデミーなどの巨大アカデミーになれば、ジュニアを受け入れるための学校も備えています。そういうところは日本人の長期滞在には必須となるビザに関してもサポートを受けられるケースが多いですね。

 何より、大規模アカデミーは何10面も並んだテニスコート、巨大でゴージャスな施設、素晴らしいジムやプール、宿泊施設、有名選手やコーチが揃い、初めて行けば圧倒されます。毎日隣で有名選手が練習したり、ご飯を食べていたり、そこにいるだけでも夢のような場所なのです。

文●市川誠一郎

〈PROFILE〉
1984年生まれ。開成高、東大を卒業後ゼロからテニスを始め、32歳でプロ活動スタート。36歳からヨーロッパに移り、各地を放浪しながらITFツアーに挑んでいる。Amebaトップブロガー「夢中に生きる」配信中。ケイズハウス/HCA法律事務所所属。

【PHOTO】雑草プロの世界転戦記・ヨーロッパのテニスアカデミーでの日常風景