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暴行疑惑のズベレフ、ATPの調査結果は証拠不十分で処分なしに!「この問題が解決されたことをうれしく思う」<SMASH>

中村光佑

2023.02.02

かねてから暴行疑惑を否定してきたズベレフ。1年3か月にわたるATP第三者機関による調査の結果、処分なしと決まった。(C)Getty Images

 元恋人のオルガ・シャリポワさんからDVを告発されていた男子テニス世界ランク14位のアレクサンダー・ズべレフ(ドイツ)について、ATP(男子プロテニス協会)はこのほど公式サイトで声明文を掲載。証拠不十分であることを理由に処分を課さないことを正式に発表した。

 2018年の夏から19年の秋までの約1年にわたりズベレフと交際していたシャリポワさんは、翌20年10月に「ズベレフから精神的・肉体的な虐待に苦しめられていた」と告発。21年8月には米オンライン・マガジン「スレート」のインタビューでも「2019年のATP1000北京大会期間中にも暴行を受けた」と主張していた。

 当のズベレフは以前からDV容疑を完全に否定していたものの、ATPは一連の報道を受けて21年10月に真相究明を目的とした内部調査を開始。そして同協会は第三者機関「レイク・フォレスト・グループ」(以下LFG)によって実施された約1年3か月にも及ぶ調査の結果、「証拠が十分でない」としてズベレフへの処分を行なわない方針を固めた。今回のATPの声明文では詳細を以下のように説明している。

「LFGはシャリポワとズベレフ、そして家族や友人、テニス選手、ATPツアー関係者を含む計24人に広範囲な聞き取り調査を実施しました。調査では、テキストメッセージ、オーディオファイル、写真など、シャリポワさんとズベレフ選手の両者が提出した資料を確認しました。これには、第三者の専門家を通じて、ズベレフ選手の電子機器から任意で抽出された資料も含まれています。

 LFGはまた、上海大会に関連する運営記録、第三者の証人から提出された文書、SNSの投稿や報道を含む公的記録も確認しました。15か月にわたる徹底的なプロセスを経て、LFGは完全な報告書をATPに提出しました。

 信頼できる証拠と目撃者の報告の不足に加え、シャリポワさん、ズベレフ選手、その他インタビューを受けた方々による相反する供述に基づき、調査ではDVの申し立てを立証することができず、ATPのオンサイト違反または重大な規則違反があったと判断することはできませんでした」
 
 この発表から程なくしてズベレフは公式インスタグラム(@alexzverev)のストーリーズを更新。ようやく自身の無実が証明されたことについて次のように喜びと感謝の言葉を綴った。

「僕は最初から無実を主張し、根拠のない疑惑を否定してきました。ATPの調査を受け入れて全面的に協力してきた一方で、この一件に関してATPが時間を割き、注力してくれたことに感謝しています。これで中立的な第三者機関による調査が終了し、私に有利な決定が下されました。

 今回のATPの独立した調査に加えて、私はドイツとロシアで行なわれた裁判でも勝訴しています。ようやくこの問題が解決されたことをうれしく思っています。今の自分の優先事項は、ケガから復活してこの世界で一番好きなこと、テニスに全力を注ぐことです。サポートし続けてくれた友人や家族、ファンの皆さんに感謝を申し上げます。長く困難な道のりでしたが、最後に正義が勝ったのです」

 ただしATPは「新たな証拠が明らかになった場合、あるいは法的手続きによりATPルール違反が明らかになった場合」に、今回の決定が「再評価される可能性はある」と通告している。それでもひとまずは一件落着といったところだろう。

文●中村光佑

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