海外テニス

シャポバロフがテニス界の男女不平等を糾弾する寄稿。著しい賞金格差に「その思考回路が理解できない」<SMASH>

中村光佑

2023.03.09

シャポバロフは同じくテニス選手の恋人との会話の中で、男女間の激しい格差について認識。問題提起すべく米メディアに寄稿した。(C)Getty Images

 女性の自由や平等について考える機会を設ける目的で1975年に国際連合が制定した3月8日の「国際女性デー」を基点に、アメリカをはじめ世界各国では毎年3月を「女性史月間(Women’s History Month)」と定めており、歴史上あるいは現代社会における女性の貢献に焦点を当てる。これにちなんで男子テニス世界ランク30位のデニス・シャポバロフ(カナダ)が、このほど寄稿した米メディア『The Players Tribute』でテニス界のジェンダーギャップに苦言を呈した。

 テニス界での男女差別撤廃への取り組みは、現在のWTA(女子テニス協会)の創設者としても知られる元世界女王のビリー・ジーン・キング氏(アメリカ/79歳)を中心に広がりを見せてきた。2007年からは全ての四大大会において男女の賞金総額が同額となっている。

 また昨年11月末にはITF(国際テニス連盟)がジェンダーバランスを整える目的で、連盟憲章の改正を発表。27年からは同連盟の理事会に男女各4人以上から構成される計14人の理事を配置するなど、さらなる男女格差の是正に踏み切る意向を示している。

 ところがツアー大会では依然としてジェンダーギャップが非常に大きく、とりわけそれは出場選手の獲得賞金に如実に表れている。

 一例を挙げると昨年6月に行なわれた男子のハーレ大会(芝/ATP500)では優勝賞金が39万9,170ユーロ(約5,656万円)だったのに対し、同時期に開催された女子のベルリン大会(芝/WTA500)の優勝賞金は5万5,300ユーロ(約780万円)だった。これについては現女子世界40位のマルタ・コスチュク(ウクライナ)が自身のSNSで「こんなに差があるのは私たちが悪いの?」と疑問を呈し、ファンの間で反響を呼んだ。

 シャポバロフは、自身と同じくプロテニス選手でガールフレンドでもある世界145位のミリヤム・ビョークランド(スウェーデン)が、とあるWTA250の大会の出場権を獲得した際に2人で賞金の話をし、男女間での差があまりにも大きいことに唖然としてしまったと明かす。
 
「僕はミリヤムにこう言ったんだ。『本戦に出るだけで、最低でも7,000ドルはもらえるよ』とね。すると彼女はまるで僕にテニス初心者なのかと聞いてくるような目で『私たち(女子)は1,000ドルくらいだと思う』と言った。それを聞いて『そんなことがあり得るのか?』と思った」

 その後シャポバロフは男女間でプレーのレベルに大きな差はないと述べたうえで、男女平等が実現されていないテニス界の現状をこう嘆いた。

「僕はいまだにその思考回路が理解できない。女子はチケットが売れないと言う人もいるが、僕が試合を見に行くとスタジアムは満員だ。昨年8月にワシントンで開かれたWTA250で、ミリヤムがダリア・サビル(オーストラリア/現64位)と対戦した時のスタンドの写真を撮ったが、満員だった。非常に激しいバトルだった。男子も同時期にATP500の大会をやっていたが、1回戦の勝利だけで14,280ドルを獲得した。でもサビルが手にしたのは4,100ドルだった。3分の1以下だ!」

「テニスにおける男女格差は非常に不公平だ。全く意味をなさない。僕たちは1年中旅をしてホテルに泊まり、コーチやスタッフに給料を払う。莫大な費用がかかるわけだ。スター選手たちはお金の心配をする必要はないが、ツアー選手の多くは、収支を合わせるだけでも苦労している。このような選手にとって、賞金とはまとまったお金を得ることではなく、生き残るためのものだ」

 テニス界の男女平等については選手の間でも様々な意見が出ている。それらをうまく集約し、どのように問題解決を図っていくのかが今後の課題となるだろう。

文●中村光佑

【PHOTO】ハイスピードカメラが捉えた、シャポバロフの型破りなサービスの連続写真!