眩しい日差しが、容赦なくコートや観客席に照り付ける。会場内に流れる大音量ミュージックが試合中も四方から聞こえ、アリーナに隣接されたフードコートの2階席では、観客たちがビールをあおりながら楽しそうに試合をのぞき込んでいた。
スタンドを包む喧騒と熱は、いかにもマイアミの大会らしい。ただ、2日前に戦ったセンターコートのナイトセッションと大きく異なるその環境が、ダニエル太郎を幾分、戸惑わせていた。
男子テニスツアー「マイアミ・オープン」3回戦の、ダニエル対エミル・ルースブオリ戦。
「相手がすごくうまく僕対策をしてきたとも思うし、自分もやっぱりコンディションの違いは感じた。ボールが手元に食い込んでくるし、ボールの跳ね方も違って。そこらへんが、特にファーストセットでは慣れなくて……」
加えて、2回戦で第13シードのアレクサンダー・ズベレフを破っていたダニエルには、『次も勝たなくては』という内なる焦燥もあったという。逸る気持ちを落ち着かせようとするも、試合が組まれた“ブッチ・バックホルツコート”は、驚くほどに進行が早い。
「いつもより自分が焦っていることには気付いていたんですが、僕の前の試合がどれも恐ろしいほど早くて。アップの時間も早めなくてはいけなかったし、基本的に『今日は勝たなくちゃ』と焦っていたので、そこから抜け出すのに少し時間がかかりました」
もちろん、相手のルースブオリのクールで効率よいテニスも、ダニエルの焦燥に拍車をかけた要因だ。
第1セットは先にブレークで先行するも、相手のネットプレーに苦しめられ逆転を許した。第2セットではチャンスの数ではダニエルが勝るも、最後の重要な数ポイントを常に相手に握られた。
3-6、6-7(3)の悔しい敗戦。試合後のダニエルは、「環境が全然違っても、アジャストしなくてはいけないのが僕たちの仕事。そこは自分にも責任があるし、学びの一つ」だと言った。
今回のマイアミ・オープンで、2月から続いた北中米のハードコートシリーズは終了。キャスパー・ルード、マテオ・ベレッティーニ、そして今大会ではズベレフら並み居る実力者を破った1か月半を振り返り、ダニエルは言葉に力を込めた。
「何週間も連続で勝利をつなげられたのは、自分の実力が上がってる証拠。今日みたいに、最高なプレーができたわけではない日でも、チャンスがあるところまで持っていけた。自分のベースのレベルが上がっているフィーリングがある」
さらに彼は、自分に確認するように「うん」とうなずき、こうも続けた。
「自分の可能性を感じられた……テニスやってて良かったと思えた1か月半だった。それは単に勝ったからだけではなく、プレーの向上を感じられたし、観客とのつながりも得られた。もっともっと、これから学んでいけるところがある、成長できると思えたから、やりがいがある。
オーストラリア・オープンの時には、テニス以外のことでのつらさがあり、もうテニスができないのではと思うくらい精神的にいっぱい、いっぱいだったんです。でも今大会は、ちゃんとこれから自分はどういうふうに進んでいきたいのか、その方向性が見えてきた場所だった」
「だから、すごい良かったです」。そう言いこぼす少しはにかんだ笑みが、得たものの大きさを、雄弁に物語っていた。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】ダニエル太郎らが活躍したデビスカップ2023「日本対ポーランド」戦スナップ集!
スタンドを包む喧騒と熱は、いかにもマイアミの大会らしい。ただ、2日前に戦ったセンターコートのナイトセッションと大きく異なるその環境が、ダニエル太郎を幾分、戸惑わせていた。
男子テニスツアー「マイアミ・オープン」3回戦の、ダニエル対エミル・ルースブオリ戦。
「相手がすごくうまく僕対策をしてきたとも思うし、自分もやっぱりコンディションの違いは感じた。ボールが手元に食い込んでくるし、ボールの跳ね方も違って。そこらへんが、特にファーストセットでは慣れなくて……」
加えて、2回戦で第13シードのアレクサンダー・ズベレフを破っていたダニエルには、『次も勝たなくては』という内なる焦燥もあったという。逸る気持ちを落ち着かせようとするも、試合が組まれた“ブッチ・バックホルツコート”は、驚くほどに進行が早い。
「いつもより自分が焦っていることには気付いていたんですが、僕の前の試合がどれも恐ろしいほど早くて。アップの時間も早めなくてはいけなかったし、基本的に『今日は勝たなくちゃ』と焦っていたので、そこから抜け出すのに少し時間がかかりました」
もちろん、相手のルースブオリのクールで効率よいテニスも、ダニエルの焦燥に拍車をかけた要因だ。
第1セットは先にブレークで先行するも、相手のネットプレーに苦しめられ逆転を許した。第2セットではチャンスの数ではダニエルが勝るも、最後の重要な数ポイントを常に相手に握られた。
3-6、6-7(3)の悔しい敗戦。試合後のダニエルは、「環境が全然違っても、アジャストしなくてはいけないのが僕たちの仕事。そこは自分にも責任があるし、学びの一つ」だと言った。
今回のマイアミ・オープンで、2月から続いた北中米のハードコートシリーズは終了。キャスパー・ルード、マテオ・ベレッティーニ、そして今大会ではズベレフら並み居る実力者を破った1か月半を振り返り、ダニエルは言葉に力を込めた。
「何週間も連続で勝利をつなげられたのは、自分の実力が上がってる証拠。今日みたいに、最高なプレーができたわけではない日でも、チャンスがあるところまで持っていけた。自分のベースのレベルが上がっているフィーリングがある」
さらに彼は、自分に確認するように「うん」とうなずき、こうも続けた。
「自分の可能性を感じられた……テニスやってて良かったと思えた1か月半だった。それは単に勝ったからだけではなく、プレーの向上を感じられたし、観客とのつながりも得られた。もっともっと、これから学んでいけるところがある、成長できると思えたから、やりがいがある。
オーストラリア・オープンの時には、テニス以外のことでのつらさがあり、もうテニスができないのではと思うくらい精神的にいっぱい、いっぱいだったんです。でも今大会は、ちゃんとこれから自分はどういうふうに進んでいきたいのか、その方向性が見えてきた場所だった」
「だから、すごい良かったです」。そう言いこぼす少しはにかんだ笑みが、得たものの大きさを、雄弁に物語っていた。
現地取材・文●内田暁
【PHOTO】ダニエル太郎らが活躍したデビスカップ2023「日本対ポーランド」戦スナップ集!