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海外テニス

ロシア勢への対応ばかり論じられる現状にマリーが異議。ウクライナ支援こそ「焦点を当てるべき重要なこと」<SMASH>

中村光佑

2023.04.13

テニス界はロシア勢の出場許容問題で賛否が割れている。マリー(右)はもっとウクライナ選手への支援に目を向けるべきだと主張する。写真はロシアのメドベージェフ(左)と決勝を戦った2月のドーハ大会。(C)Getty Images

テニス界はロシア勢の出場許容問題で賛否が割れている。マリー(右)はもっとウクライナ選手への支援に目を向けるべきだと主張する。写真はロシアのメドベージェフ(左)と決勝を戦った2月のドーハ大会。(C)Getty Images

 既報の通り今年7月に開催されるテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/芝)では、昨年の同大会で出場を禁じられたロシア・ベラルーシ選手の参加を認めることが正式に決定された。これを受けてウクライナ側は不快感をあらわにしており、同国出身の現役選手からも反発の声が高まる一方だ。

 そんななか、かねてからウクライナ支援に積極的な姿勢を見せてきた男子テニス元世界王者のアンディ・マリー(イギリス/現54位)は、先日のウインブルドン出場容認をはじめとして、ここ最近のメディアの報道が侵攻国出身の選手にフォーカスされすぎていることに違和感を抱いているようだ。

 このほど米テニス専門メディア『Tennis Majors』のインタビューに応じたマリーは、あくまでも卑劣な紛争によって多大な被害を受けているウクライナの人々に手を差し伸べ続けることが最優先事項だと強調。「ウインブルドンにとっては(ロシア・ベラルーシ人選手の出場を認めることは)難しい決断だ」と前置きしつつ、その真意について次のように説明している。

「明らかに他のスポーツはウインブルドンとは全く違う方向(侵攻国出身の選手を締め出す傾向が強いこと)に進んでいたから、とても大変だったと思うが、今回のウインブルドンの決定については、あまり気にする必要はないと思う。そのことが実際に起こっていることから少々目をそらしているような気がする。そうならないようにしたいものだ。このような議論においては、『実際にどういった問題が起こっているのか』が最前線にあってほしい」
 
 すでにウクライナへの寄付額が1億円以上にも上っているというマリーは現在も「ウクライナの選手たちに同情しているのは明白だ」と語る。そして、エリーナ・スビトリーナ(女子元世界3位)やマルタ・コスチュク(現女子38位)など同国出身のトッププレーヤーがロシア・ベラルーシ人選手に積極的措置を講じないテニス界の現状を声高に批判してきたことを踏まえ、改めて以下のように自身の考えを主張した。

「女子選手の何人かは、紛争がいかに困難な状況を招いてきたのか、またそのような状況の中で、もっとサポートがあっても良かったのではないかと感じていたようだ。昨年プレーできなかった選手だけでなく、彼ら(ウクライナ人選手)の視点も理解する必要がある。ツアーに参加しているウクライナの選手の中には、その家族や全てが影響を受け、信じられないほどの困難な時期を過ごしている選手もいる。そして、それこそが焦点を当てるべき重要なことだ」

 依然として収束の兆しが見えないロシアのウクライナ侵攻。どうすれば選手間に軋轢を生み出さずに済むのか、まだまだテニス界でも模索の日々が続きそうだ。

文●中村光佑

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