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海外テニス

LGBTへの理解が低い男子テニス界。英国人選手はカミングアウトを支持「そういう流れになるのはいいこと」<SMASH>

中村光佑

2023.04.23

去年のウインブルドンでは3回戦に進んだブローディ。LGBTの支援活動に取り組む数少ない男子選手だ。(C)Getty Images

去年のウインブルドンでは3回戦に進んだブローディ。LGBTの支援活動に取り組む数少ない男子選手だ。(C)Getty Images

 かつて四大大会のシングルスで通算18勝を誇る元世界ランク1位のマルチナ・ナブラチロワ氏(チェコ/66歳)や、同じく元世界女王のビリー・ジーン・キング氏(アメリカ/79歳)が同性愛者であることをカミングアウトして以降、女子テニスでは比較的同性愛を公表することへの抵抗感を抱く者は少ない。

 昨年7月にはトップ10プレーヤーのダリア・カサキナ(ロシア/8位)がロシア人ブロガー、ヴィティア・クラフチェンコ氏のYouTubeを通じて自身がレズビアンであることを告白したのはファンの記憶にも新しい。

 一方で男子テニス界では、同性愛を公言している者は現役・引退選手を問わずほとんど存在しない。海外メディア『UBITENNIS』によると、最近では2006年に引退した元世界64位のブライアン・バハリー氏(アメリカ/43歳)が17年にゲイであることをカミングアウトしたが、男子テニス界では前例がなかったことに加え、当時はLGBTへの理解度も今ほどは高くなかったため、SNS上では否定的な声が多く上がったという。

 ようやく多様性が認められやすい時代になってきたなかで、かねてからLGBTの支援活動に取り組んできたのが、男子世界132位のリアム・ブローディ(イギリス/29歳)だ。

 実は彼は昨年1月の「全豪オープン」で性的少数者を支援するイギリスの慈善団体「Stonewall」が掲げたイニシアチブ(構想)に基づき、シューズに虹色の靴ひもを付けてプレーした。また同大会1回戦でニック・キリオス(オーストラリア/現24位)に敗れた直後の会見では、「僕のキャリアを通じて僕を支えてくれているLGBTコミュニティのメンバーに感謝の意を示したい」とも語っていた。 
 
 そして先日応じた海外テニスメディア『CLAY』のインタビューで、ブローディは今年2月にチェコの名門サッカークラブ「ACスパルタ・プラハ」に所属するヤクブ・ヤンクト(チェコ/27歳)が同性愛を公表したことに言及し、「サッカー選手からも同性愛を告白する人が出てきた。そういう流れになるのはいいことだ」と歓迎。改めて性的マイノリティを尊重するスポーツ界が実現してほしいと強調した。

 なおブローディは男子テニス界で同性愛を公にする選手が出現しない理由を自分なりにこう分析している。

「テニスでも人生でも同じだ。ほとんどの人は普通の感覚を持っていて、同性愛を告白したら『おめでとう、よくやった』などと言ってくれる。でも心の狭い人だって常にいる。おそらくそれが、彼ら(男子選手)が全てのプレーヤーに受け入れられないと考える理由なのかもしれない。

 同性愛を公にすることでテニスをプレーするのにプレッシャーがかかると感じているのかもしれない。複雑な気持ちになってしまうのはよく理解できる。もしそうであったとしても、安心して(同性愛を)カミングアウトし、自分らしさを出せるようになってほしいと願っている」

 だからこそブローディはテニス選手を含め男性アスリートが同性愛を公にすることを躊躇する傾向が強い中で、ヤンクトの勇気あるカミングアウトは大きな意義を持つと語る。「うまくいけば、このように事態が発展し始め、より多くの人々が同性愛を告白することを快適に感じるようになるだろう」と自身の見解を述べた。

 今や性的マイノリティであるが故の苦悩を抱えるアスリートへのサポートは必要不可欠と言っても過言ではない。少しでも早くそのための環境が整うことを願うばかりである。

文●中村光佑

【PHOTO】ブローディはじめ、ウインブルドン2022で活躍した男子選手たちの厳選写真!
 

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