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ロシア・ベラルーシを受け入れた苦悩のウインブルドンが「ウクライナの人々に寄り添う大会にしたい」と強調<SMASH>

中村光佑

2023.04.26

ロシア・ベラルーシ受け入れを認めたウインブルドンは、その一方でウクライナへの支援も表明した(囲みはヒューイットAETLC会長)。(C)Getty Images

 既報の通り今年7月に開催されるテニス四大大会「ウインブルドン」(イギリス・ロンドン/芝コート)では、前回大会で出場を禁じられたロシア・ベラルーシ人選手の参加を認めることが正式に発表された。依然としてロシアのウクライナ侵攻の収束の兆しが見えないなかで、この決定には賛否両論の声が数多く上がっている。

 海外スポーツメディア『Sportskeeda』によると、先日同大会を主催するAETLC(オールイングランド・ローンテニス&クローケークラブ)のイアン・ヒューイット会長は、悩みに悩みぬいた末に侵攻国出身選手の出場を許可したことについて、「私の会長職の中でおそらく最も難しい決断だった」とのコメントを発表したという。

 その一方で同会長は、今年のウインブルドンを多大な被害を受けたウクライナの人々に寄り添う大会にしたいと強調。その目標を達成すべく、AETLC主導で以下のような取り組みが行なわれると説明している。

「販売チケット1枚につき1ポンド(約166円)をウクライナの救済活動に寄付し、その過程で50万ポンド(約8300万円)を集めること」

「2023年のグラス(芝)コートシーズンを通して、各大会の予選と本選の両方に出場するウクライナ人選手とそのチームメンバーのための2部屋分の宿泊費と、同国選手とそのチームが必要とする練習施設の費用の支払い」

「ウインブルドンをロシアとベラルーシで放送せず、両国のメディア関係者の会場入りを禁止すること」
 
 またヒューイット会長は紛争が始まって以降、侵攻国出身の選手が国旗や国名を使用しない中立の立場でツアー大会の参加を認められている現状を踏まえ、「ロシアとベラルーシの選手たちは"中立の選手"として、ウインブルドンに滞在している間は、ロシア、ベラルーシ、ウクライナでの戦争への支持を表明しないことを約束する宣言書に署名することを必須条件としている」と発言。「すでに何人かの選手は署名を始めている」と明らかにした。

 なお、今年のウインブルドン本戦は7月3日(月)に始まり、女子シングルス決勝は7月15日(土)、男子シングルス決勝は7月16日(日)に行なわれる予定だ。

文●中村光佑

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