海外テニス

「次は大丈夫」全仏オープンテニス初挑戦の坂詰姫野は予選敗退に終わるも手応え!「この舞台がベースになるようにしたい」<SMASH>

内田暁

2023.05.26

初めてグランドスラム(四大大会)の予選を戦い終えた坂詰の視線の先には新たな景色が広がってきたようだ。写真:内田暁

「負けてしまったけれど、そこからヒントをいっぱい得ることができた。今回、すごく良い勉強になりました」

 初めて臨んだ全仏オープン予選では、結果的に初戦で敗れはした。それでも試合後の凛とした表情と言葉は、得た物の大きさを物語る。

 現在の世界での地位は、168位。昨年11月の時点で300位だったランキングを急上昇させ、坂詰姫野は、自身初のグランドスラム予選の舞台へと到達した。

 全仏オープン予選出場に適応されるランキングが決まるのは、4月中旬から下旬。当落線上にいる選手は、ギリギリまで大会に出てポイントを稼ぎたいところだ。

 ところが坂詰は、3月中旬にカンベラ(オーストラリア)のITF大会を最後に、ランキング対象となる試合には出ていない。代わりに彼女が出場したのは、4月中旬にウズベキスタンで開催された、女子国別対抗戦のビリー・ジーン・キング・カップ(以下BJK杯/旧フェドカップ)。代表に初選出された坂詰は、シングルスで2勝を日本にもたらし、アジア/オセアニアグループ優勝に貢献した。

 坂詰が、日本ナショナルチーム監督の杉山愛から、代表選出の打診を受けたのは2月。当時の坂詰のランキングは200位台後半で、全仏予選出場の目安となる200位までは、まだ距離があった。その時期に代表戦で失う1週間は、決して小さくない。実際には、前後の移動や調整を含めれば、出場の機を失う大会数は2~3に及ぶ。
 
 それでも坂詰は、日の丸を背負うことに「迷いは無かった」と明言する。

「日本代表に正式に選んで頂いたのが、今回が初めて。本当に選んで頂いたことがうれしかったし、声を掛けて頂いたからには、出たいという思いがありました」

 迫る全仏予選への出場可否は微妙ではあるが、「それは自分が頑張ればいいだけの話。BJK杯に出ることは前提で予定を考えていきました」と言った。

 3月下旬の日本開催ITF大会に出るかどうか迷ったが、最終的には「移動や調整を考えて出ない」という決断を下す。カナダとオーストラリアで行なわれる4大会が、全仏前にポイントを得られる最後のチャンスとなった。

 結果的に坂詰は、それらの大会で準決勝進出2回、準優勝2回の結果を残し、出場圏内へと滑り込む。

「私はあまりポイント計算もしていなかったし、出る大会、全てで頑張るだけでした。でもコーチたちには、3月で全仏予選に出られるまで上げるというプランがあったと思います」

 そう言い無邪気に広げる笑みに、コーチへの信頼が滲んだ。
 
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坂詰のさらなる成長を導いた吉田コーチの存在