今年も開幕早々熱戦が繰り広げられているテニス四大大会「全仏オープン」。今大会に特別な想いを持って臨んでいるのが、右ヒジのケガからの完全復活を目指す男子元世界10位のルーカス・プイユ(フランス)だ。
ATPツアーで5つのタイトルを獲得し、2019年の全豪オープンでは四大大会初のベスト4入りを果たした29歳のプイユ。22歳で出場した16年の全米オープン4回戦では、男子テニス界が誇るレジェンド、ラファエル・ナダル(スペイン/現15位)に勝利したこともファンの記憶に新しい。類まれなポテンシャルで飛躍を遂げていただけに、周囲からは大きな期待を寄せられていた。
ところが、19年10月に右ヒジのケガを負ってから状況は一転する。翌20年7月には、同箇所の手術に成功してツアー公式戦にも復帰したものの、以前のような強さを取り戻すことはできず。さらにはうつ病やアルコール依存症まで患い、まさに奈落の底に突き落とされたかのような日々を送ってきた。18年にキャリアハイの10位を記録した世界ランキングも現在は675位となっている。
それでもプイユは諦めずに努力を重ねてきた。そしてその努力がようやく実を結び始めている。今回の全仏では予選3試合を見事に勝ち抜き、昨年の全仏以来約1年ぶりとなるツアーレベルでの本戦出場権を獲得。予選決勝後にはベンチで顔を覆いながら人目をはばからず喜びの涙を流し、SNS上でも反響を呼んでいた。
勢いそのままに現地5月28日に実施された、ラッキールーザー(予選敗者が繰り上がる措置)のユリジ・ラディオノフ(オーストリア/134位)との1回戦でも素晴らしいプレーを披露する。予選決勝で勝利したラディオノフを相手に序盤から抜群の安定感を見せたプイユは、試合を通して1度もブレークを許さず、反対に自身は10度握ったブレークポイントのうち4度ブレークに成功。6-2、6-4、6-3のストレートで初戦を突破し、19年の全米以来実に約3年8か月ぶりとなる四大大会での勝利を挙げた。
見事な快勝劇で初戦を突破したプイユに、会場の観客からは温かいスタンディングオベーションが。その直後に観客席からある歌が聞こえてくる。フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」だ。それに合わせてプイユも左手を挙げながら高らかに歌い、会場のファン全員と喜びを分かち合うという感動的なシーンが生まれた。
直近10年の全仏で最低ランクの1回戦勝利者となったプイユは、試合後の会見で奇しくも予選決勝の再戦が実現したこの日の初戦をこう振り返っている。
「特別な試合だったね。同じ大会で、3日の間で同じ相手と対戦するのは、僕にとって初めてのことだった」
一方で今大会は久々に四大大会での上位進出の可能性もあるのではないかとプイユは自信ありげに語る。「ドローを見たときは(予選で戦った相手と再び対戦するということで)かなりストレスを感じたけど、逆に良いドローであることにも気づいた。予選通過者が1回戦からアルカラス(スペイン/同1位)やメドベージェフ(ロシア/同2位)などと対戦することもあるから、良い組み合わせだと思う」とのコメントを残した。
2回戦では第14シードのキャメロン・ノーリー(イギリス/13位)と対戦するプイユ。母国ファンの前でさらなる勝ち上がりを期待したいところだ。
文●中村光佑
【PHOTO】2019年に楽天OPでプレーしたプイユ
ATPツアーで5つのタイトルを獲得し、2019年の全豪オープンでは四大大会初のベスト4入りを果たした29歳のプイユ。22歳で出場した16年の全米オープン4回戦では、男子テニス界が誇るレジェンド、ラファエル・ナダル(スペイン/現15位)に勝利したこともファンの記憶に新しい。類まれなポテンシャルで飛躍を遂げていただけに、周囲からは大きな期待を寄せられていた。
ところが、19年10月に右ヒジのケガを負ってから状況は一転する。翌20年7月には、同箇所の手術に成功してツアー公式戦にも復帰したものの、以前のような強さを取り戻すことはできず。さらにはうつ病やアルコール依存症まで患い、まさに奈落の底に突き落とされたかのような日々を送ってきた。18年にキャリアハイの10位を記録した世界ランキングも現在は675位となっている。
それでもプイユは諦めずに努力を重ねてきた。そしてその努力がようやく実を結び始めている。今回の全仏では予選3試合を見事に勝ち抜き、昨年の全仏以来約1年ぶりとなるツアーレベルでの本戦出場権を獲得。予選決勝後にはベンチで顔を覆いながら人目をはばからず喜びの涙を流し、SNS上でも反響を呼んでいた。
勢いそのままに現地5月28日に実施された、ラッキールーザー(予選敗者が繰り上がる措置)のユリジ・ラディオノフ(オーストリア/134位)との1回戦でも素晴らしいプレーを披露する。予選決勝で勝利したラディオノフを相手に序盤から抜群の安定感を見せたプイユは、試合を通して1度もブレークを許さず、反対に自身は10度握ったブレークポイントのうち4度ブレークに成功。6-2、6-4、6-3のストレートで初戦を突破し、19年の全米以来実に約3年8か月ぶりとなる四大大会での勝利を挙げた。
見事な快勝劇で初戦を突破したプイユに、会場の観客からは温かいスタンディングオベーションが。その直後に観客席からある歌が聞こえてくる。フランスの国歌「ラ・マルセイエーズ」だ。それに合わせてプイユも左手を挙げながら高らかに歌い、会場のファン全員と喜びを分かち合うという感動的なシーンが生まれた。
直近10年の全仏で最低ランクの1回戦勝利者となったプイユは、試合後の会見で奇しくも予選決勝の再戦が実現したこの日の初戦をこう振り返っている。
「特別な試合だったね。同じ大会で、3日の間で同じ相手と対戦するのは、僕にとって初めてのことだった」
一方で今大会は久々に四大大会での上位進出の可能性もあるのではないかとプイユは自信ありげに語る。「ドローを見たときは(予選で戦った相手と再び対戦するということで)かなりストレスを感じたけど、逆に良いドローであることにも気づいた。予選通過者が1回戦からアルカラス(スペイン/同1位)やメドベージェフ(ロシア/同2位)などと対戦することもあるから、良い組み合わせだと思う」とのコメントを残した。
2回戦では第14シードのキャメロン・ノーリー(イギリス/13位)と対戦するプイユ。母国ファンの前でさらなる勝ち上がりを期待したいところだ。
文●中村光佑
【PHOTO】2019年に楽天OPでプレーしたプイユ
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