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ベラルーシのサバレンカが戦争および母国大統領を支持しないと明言「私はただテニス選手でありたい」<SMASH>

中村光佑

2023.06.07

全仏準々決勝、スビトリーナ(左)は自身の信念に基づき侵攻国の選手であるサバレンカ(右)との握手を拒否。この試合後の会見で、サバレンカは戦争とルカシェンコ大統領の不支持を明言した。(C)Getty Images

 現在開催中のテニス四大大会「全仏オープン」の女子シングルスで自身初のベスト4入りを果たした第2シードのアリーナ・サバレンカ(ベラルーシ/世界ランク2位)が、準々決勝後の記者会見で再び反戦の意を示すとともに、ロシアのウクライナ侵攻を支援する母国のルカシェンコ大統領を支持しない意志を表明した。

 初戦から全てストレートで勝ち上がってきたサバレンカは、現地6月6日の準々決勝でウクライナ国籍のエリーナ・スビトリーナ(元世界3位/現192位)と対戦。持ち前の強力なストロークを軸に試合を通して3度のブレークに成功し、1時間36分で準決勝進出を決めた。
 
 そんなサバレンカは自身に必要以上に向けられるウクライナ侵攻に関する質問に大きなストレスや不安感を抱えていたという理由で、3回戦と4回戦後の記者会見は欠席していた。だが一転してスビトリーナ戦後の会見では記者からの質問に丁寧に応じ、これまでと同じように反戦の意を表明。さらに今回は一歩踏み込む形でルカシェンコ大統領への批判の言葉も口にしたのだ。
 
「私たちはベラルーシで開催されたフェドカップ(現BJK杯/国別対抗戦)でたくさんプレーして、会場に来てくれた彼(ルカシェンコ大統領)とは試合後に一緒に写真を撮っていた。でもその時はベラルーシでもウクライナでもロシアでも何も悪いこと(紛争)は起こっていなかった。何度も言うけど、私は戦争を支持していないし、自分の国が紛争に巻き込まれることも望んでいない。つまり今はルカシェンコも支持していない」
 
 その後サバレンカは「私はいかなる政治にも関わりたくない」とコメント。とにかく今は自分のプレーに集中したいとしてこう語った。
 
「スポーツが政治に巻き込まれることを私が望まないのは、自分がただの25歳のテニス選手だから。もし私が政治的な人でありたいなら、ここにはいないと思う。私はただテニス選手でありたい」

 ちなみにこの日の準々決勝では勝利したサバレンカが試合後に握手をしようとスビトリーナをネット際で待っていたが、スビトリーナはダリア・カサキナ(ロシア/9位)との4回戦同様に侵攻国出身選手であるサバレンカとの握手を拒否。握手を交わさなかったスビトリーナに対し、会場からは心ないブーイングが巻き起こった。

 会見で上記のシーンについて言及したサバレンカは「あれ(ネット際で待った行為)は本能的に、いつもの流れでやってしまった」としつつ、産休明けから素晴らしい活躍を見せているスビトリーナを称賛。「エリーナも試合の最後にあんなにブーイングされるに値するとは思わない。出産後に彼女がしている全てのことを尊敬しているし、素晴らしいストーリーを作り上げている。彼女は私が尊敬する人よ」と続けた。

 なお勝利したサバレンカは全仏初の決勝進出を懸け、準決勝で世界43位のカロリーナ・ムチョバ(チェコ)と対戦する。

文●中村光佑

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