海外テニス

【伊達公子】ウインブルドンは昨年優勝のルバキナとジョコビッチが最有力候補<SMASH>

伊達公子

2023.06.30

シフィオンテクにとって「ウインブルドン優勝は大きなチャレンジ」と言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 7月3日からテニス四大大会の1つ「ウインブルドン」が始まります。今年はロシア、ベラルーシの選手も出場が可能になり、ポイントも付く、今まで通りの大会に戻りました。

 女子選手で最も優勝に近いのは、昨年優勝したルバキナでしょう。全仏オープンを途中棄権し、芝の前哨戦でも体調不良のようですが、回復すればサービスとストローク力があり、昨年よりも安定しているので、芝では強いと思います。

 芝というサーフェスを考えれば、まったく違うタイプですがジャバーも有力です。ドロップショットやスライスが得意で、ネットプレーもできます。サービスでもワイドに打って相手を外に出し、その後にネットプレーで決めるイメージができています。ワイドサービスは打てても、意外に次にどうするかが決まっていない選手がいる中、彼女は芝をどう使うかということが見えています。

 ルバキナとジャバーが対決した場合、ルバキナはパワーとスピードがあり、ダウンザラインに展開するのが結構早い。ジャバーにとっては、その早い展開になると、ネットにつなげる自分の展開が難しくなるので、相手にダウンザラインを打たせないようにするのがポイントになってきます。

 全仏オープンで準優勝したムチョバは、ジャバーとネットプレーが多用できるという意味では似たタイプです。だから芝での活躍も期待できますが、2大会連続でグランドスラムの決勝に進出することは簡単なことではありません。彼女がそこまでできれば、ルバキナのようにツアーでも突き抜けた存在になれます。
 
 ナンバー1で全仏オープンに優勝したシフィオンテクにとって、ウインブルドン優勝は大きなチャレンジでしょう。もう少し頭の柔軟性が見られるプレーになれば可能性が出てきますが、昨年はサーフェスに関係なく自分のテニスを貫き通している様子だったので、そのままではどこかで足元をすくわれそうです。芝では相手の逆を突くのが有効ですが、そういう戦術が少ないですね。

 女子の場合は、シフィオンテク、サバレンカ、ルバキナが実力的に上位に進出するだろうと考えられて、その中で最も芝に向いているのがルバキナ。ジャバーとムチョバが芝というサーフェスに適したプレーでどう絡んでくるのかだと思います。

 男子は全仏オープンで優勝し、ナンバー1に戻ったジョコビッチが最有力です。男子の場合は5セットを2週間戦わなくてはいけないので、ペース配分やピーキングという経験が必要になってきます。その点でアルカラスはまだジョコビッチにグランドスラムで対抗するのは難しいと感じます。

 他の成長著しい若手の選手たちも、まだグランドスラムを戦い抜く経験が足りません。ナダルが来季での引退を語った今、ジョコビッチを倒せる選手の名前を挙げられないのが現状です。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

【PHOTO】シフィオンテクなど全仏オープン2023で奮闘する女子選手たちの厳選写真!