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海外テニス

【伊達公子】ウインブルドンは他大会とかなり違う。シード選手用ロッカールームの扉を初めて開けた時<SMASH>

伊達公子

2023.07.14

会場近くに家を借りるのがシード選手に多いのには理由があると言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

会場近くに家を借りるのがシード選手に多いのには理由があると言う伊達公子さん。写真:塚本凛平(THE DIGEST写真部)

 開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」も準決勝、決勝を残すのみとなりました。ウインブルドンは最も歴史があるテニス大会ですが、柔軟に変化もしています。その1つが今年から伝統のミドルサンデー(※真ん中の日曜日は試合をせず休日だった)を止めたことです。ミドルサンデーは「ザ・ウインブルドン」という感じがしていたので残念ではありますが、これも時代の流れでしょう。

 しかし、ウインブルドンらしさが、しっかりと残っている部分もあります。他のグランドスラムと違う点としてまず挙げられるのは、予選が別会場ということです。つまり、本戦入りした選手でなくては、ウインブルドンの会場に入れません。もはや予選とはいえ、別の大会のようです。予選で負けるとウインブルドンに来た感じはしませんね。

 ただ、90年代の予選会場と比較すると、すごく運営が立派になりました。昔は芝にラインを引いただけという感じで、仰々しいラウンジもありませんでしたが、今は予選でもトランスポーテーションもあり、ラウンジにはパソコンも設置されています。それでも本戦の会場である「ウインブルドン」とは全く違うという点では変わりませんが。

 他の3つのグランドスラムは、その国のテニス協会が運営していますが、ウインブルドンは、「The All England Lawn Tennis & Croquet Club」というクラブが運営しています。そして、ウインブルドンで優勝すると、そのクラブの名誉会員になれます。これは他にはない特権ですね(笑)。

 ロッカールームがレベルによって分かれているのも特長です。今はシード選手用とその他の選手用の2つですが、私のファーストキャリアの時はシード選手、100位以内の選手、100位以下の選手の3つに分かれていました。

 シード選手用のロッカーに初めて入る時は、「知らない扉を開けられた」という感じがありました(笑)。どんなにすごい所なのかと思っていましたが、大会仕様というよりもクラブのロッカールームなんです。ゆったりとしたスペースにカーテンで仕切られた個別の着替えられる場所、バスタブがいくつかあったりしましたが、大会期間中のアスリートにとっては寛げすぎてしまう感じが強かった印象です(笑)。
 
 選手が会場の近くに家を借りるのはウインブルドンならではです。家のサイズは様々ありますが、シード選手は結構大きな家を借りています。私もファーストキャリアの時は5ベッドルームの家を借りて親を呼んだこともありました。

 会場から近いので便利で快適なぶん、料金は結構します。実は家を借りる場合は、最低2週間というところが多いんです。ホテルの場合は早く負けて次の日にチェックアウトした場合、予約していた残りの分は払う必要がなくなりますが、家にすると2週間分を払うわけですから、大会の2週目に残らないと無駄になってしまいます。

 セカンドキャリアの時は2週目に残る計画が立てづらかったので、早めに到着するスケジュールにしたり、ダブルスに出場して目途を立てていました。最近は短い契約ができる家もあるようですが、家を借りるのにシード選手が多いのはそういう理由もあるのです。

 最後にウインブルドンと言えばセキュリティーの厳しさです。どんなビッグネームでもパスを忘れたら会場には入れてくれません。何とかならないことがわかっているので、パスを忘れたら取りに帰りますね。この厳しさは変わらないかもしれません。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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