現在開催中のテニス四大大会「ウインブルドン」の男子シングルスで初のグランドスラムベスト４入りを果たした世界ランク８位のヤニック・シナー（イタリア／21歳）が、準々決勝後の記者会見で次戦に向け万全の準備を整えると決意を示した。

　失セット数をわずか１に抑えて順当に勝ち上がり、２年連続のウインブルドン８強に進出したシナー。準々決勝ではここまで快進撃を続けてきたノーシードのロマン・サフィウリン（ロシア／92位）を相手に終始攻撃的なテニスを貫き、計６度のブレークに成功して６－４、３－６、６－２、６－２で勝利。四大大会で過去４度にわたって阻まれてきた“ベスト８の壁”をついに打ち破った。

　準決勝で対戦するのは、昨年のウインブルドン準々決勝で２セットアップから大逆転負けを喫したノバク・ジョコビッチ（セルビア／２位）。大会５連覇と前人未到の四大大会24勝目を狙う36歳の鉄人とのリベンジマッチに挑むシナーは、これまでのラウンドとは違い２日間のインターバルを挟んで大一番に臨むことを踏まえつつ、「試合前の準備の仕方はいつもと変わらない」と語った。

「準々決勝と準決勝の間に２日間の休みがあっても、試合前のルーティンは変えない。練習は同じ時間にやるし、準決勝の前日には料理をする。いつも試合の前夜にそれ（料理）をやってきたからだ。いつも通りパスタとトマトソースを作るよ。それは変えないでおこうと思う」
  　シナーが準々決勝まででコートに立った時間は計12時間強。１試合あたり2.5時間ほどと５セットマッチの四大大会では平均的と言える数字だが、36歳で未だに誰も止められないほどの強さを誇るジョコビッチに打ち勝つためには、無論身体を万全の状態にしておくことが必須である。

　そのためにシナーは「睡眠を大事に考えたい」とコメント。「長い時間眠れるのは、とてもラッキーなことだ。僕は目覚ましをかけなければ、昼まで眠れる。睡眠は回復に一番良い方法だ」と続けた。

　ちなみに今大会のシナーは初戦からシード選手およびトップ50の選手と１度も当たっていないため、海外メディアやSNSでは「比較的楽な組み合わせで勝ち上がった」との声が上がっている。だが裏を返せばそれだけシナーが取りこぼしの少ない選手であることが改めて証明された形であり、まだ21歳にしてプレッシャーに耐える力を備えている点は評価されるべきだろう。

　当のシナーは会見で今大会の勝ち上がりについて「決して楽なものではなかった」と強調。「ここまで勝ち上がってくる選手は皆、非常に良い選手だということだろう？」と記者たちに疑問を投げかけたうえで、「僕は過去にこういった（大きな）舞台でトップ選手を倒してきた。僕はどの試合も正しい姿勢で臨み、相手に立ち向かうようにしている」と締めくくった。

　いよいよ悲願の四大大会初優勝も視野に入ってきたシナー。あの大逆転負けからはや１年、果たしてジョコビッチに雪辱を果たせるのか、ファンの注目が集まる。

文●中村光佑

【PHOTO】シナー、サフィウリン、ジョコビッチらウインブルドン2023で熱戦を繰り広げた男子選手たち