海外テニス

侵攻国選手は国営企業のスポンサーシップ不可――ウインブルドン出場条件にメドベージェフは違反せず<SMASH>

中村光佑

2023.06.29

すでにウインブルドン入りし、練習コートで調整に励んでいるメドベージェフ。出場にまつわる各種規定をクリアしているということだ。(C)Getty Images

 開幕が近づいてきているテニス四大大会「ウインブルドン」(7月3日~16日/イギリス・ロンドン/芝コート)。既報の通り今年の同大会は、いまだにウクライナ侵攻が収束していないにもかかわらず、昨年出場を禁じられたロシア・ベラルーシ人選手の参加を認めている。

 ただしこれには一定の条件が設けられている。実はウインブルドンの主催側は大会公式サイトに掲載した声明文で、ロシア・ベラルーシ人選手のエントリーに関して「両国の出場者は"中立の選手"として、ウインブルドンに滞在している間はロシア、ベラルーシ、ウクライナでの戦争への支持を表明しないことを約束する宣言書に署名することを必須条件とする」との規定を掲げているのだ。

 さらに上記の規定には「今年のウインブルドンへの参加に関して、ロシアおよびベラルーシによる国家単位での資金提供(国家が運営または管理する企業からのスポンサーシップを含む)を受けている選手の入国も禁止される」とも記されている。これを踏まえたうえで「侵攻国出身プレーヤーの中で特に問題なくウインブルドンに参加できる選手」に挙げられているのが、ロシア国籍で男子世界ランク3位のダニール・メドベージェフだ。

 その根拠について、メドベージェフの代理人を務めるレフ・カシル氏が先日応じたロシアのスポーツメディア『sport24.ru』の取材で以下のように説明したという。

「彼(メドベージェフ)にはウインブルドンの規定に違反するようなスポンサー契約等は存在しない。もしロシアのプレーヤーたちがスポンサー契約解除を要求されたとしても、それは我々のクライアントを脅かすものではない。私たちのクライアントは制裁下にあるスポンサーとの契約を結んでいないからだ」
 
 ちなみに先述の「ウインブルドン出場に伴う中立宣言書」については、今年4月の段階で同大会を主催するAELTC(オールイングランド・ローンテニス&クローケークラブ)のイアン・ヒューイット会長が「すでに何名かの選手は署名を始めている」と話していた。

 開幕が来週に迫っていることを考慮すれば、出場権を得ている侵攻国出身の選手はすでに署名を完了したと思われる。そのうえでカシル氏の発言が事実であればメドベージェフは何事もなく出場を果たすことになるだろう。

 1つ懸念されるのは、紛争の収束が見えない中でロシア・ベラルーシ人選手がプレーすることをファンが受け入れてくれるのかという点だ。これについてメドベージェフは以前「我々は、それ(侵攻国出身選手の出場を歓迎してくれるかどうか)をコントロールすることはできない。仮に人々から厳しい意見が寄せられるなら、それはそれでいい。もし、彼らが僕たちを優しく歓迎してくれるなら、それは素晴らしいことだ。だから、僕らが決めることじゃない」とのコメントを残していた。

 とはいえテニス界ではウクライナ侵攻にちなんだ騒動が多発しているだけに、聖地ウインブルドンでも何らかの対策が必要になるかもしれない。

文●中村光佑

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