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大坂なおみが“21年全仏会見ボイコット騒動”を回顧「メディアのエネルギーが過剰になっていると感じて殻に閉じこもった」<SMASH>

中村光佑

2023.08.04

テニス界で大騒動となった全仏記者会見拒否宣言について、大坂なおみが改めて当時を振り返った。(C)Getty Images

 先月11日に第1子となる女児を出産した女子テニス元世界ランク1位の大坂なおみ(現493位)が、女性アスリート独自のシューズブランド「Saysh」が配信するポッドキャスト『Mountain Top Conversations』に出演。自身が世界規模の騒動を巻き起こした2021年全仏オープンでの"記者会見ボイコット騒動"を振り返りつつ、「メディアを悪者だとは思っていない」と語った。

 2年前の全仏は大坂にとっても様々な意味で"忘れられない大会"となった。同大会開幕の数日前に突如自身の公式SNSで「今年の全仏で行なわれる全ての記者会見に応じない」と宣言し、「以前から人々(主にメディア)がアスリートのメンタルヘルスについてあまり考えていないと感じていた。特に負けた選手を会見場で問い詰めるのは、落ち込んでいる人を蹴落とすようなもの」と綴った大坂。

 大会では1回戦を突破するも宣言通り試合後の会見には出席せず、規定違反による15,000ドル(当時約165万円)の罰金が科せられた。

 さらには四大大会(全豪・全仏・ウインブルドン・全米)が共同で大坂に対し、「今後も記者会見の拒否を継続する場合は、全仏オープンの失格処分やさらなる多額の罰金、将来的なグランドスラムの出場停止などの処分を受けることになる」と通告する事態にも発展。

 その直後に大坂は、18年の全米オープンで四大大会初優勝を達成して以降、長らく心の病を抱えていたことを告白し、全仏の棄権を表明するとともに一時的な選手活動の休止も余儀なくされた。

 以前から度々自身の性格を「内気でシャイ」だと語ってきた大坂は、今回のインタビューで「メディアとの付き合い方には苦労してきた」ものの、「メディアを悪者だとは考えていない」と言う。

「インタビューをたくさん受ける生活を送ってきたから私はとてもオープンマインドよ」と述べた彼女は内気な性格が災いしてか、「取材を受ける際に言葉選びを誤り、トラブルを引き起こしてしまう」とコメント。
 
 その一方で過去に物議を醸した発言も決して悪気があるわけではなかったとし、「それは私がジャーナリストを好きだからで、私は彼らと話すのが好きだし、彼らが疑問に思っていることを明らかにするのが好きなの。彼らがそのことを知っているかどうかはわからないけどね」と続けた。

 ところが自身が世界的に認知されるようになってからは、「メディアの自分に対するエネルギー(アプローチ)が過剰になっていると感じていた」と大坂は率直に明かす。そのうえで全仏での"記者会見ボイコット騒動"を回顧した25歳の元世界女王は以下のように当時の心境を語った。

「そうして私は殻に閉じこもってしまい、自分の性格が変わってしまったように感じた。でも私はそれが全くもって好ましいことだとは思わなかった。だからその時は『休まなきゃいけないけど、罰金を科されるから休めない』って思っていた。ただその当時は、そこにエネルギーを費やすくらいなら、罰金を払う方がいいのではないかと考えていた」

 そしてインタビューの最後には自身が長らく悩まされてきたメンタルヘルスの問題について言及。「メンタルヘルスのことはよく知らなかった。大人になってからは、誰もそれについて語らないし、正直なところ、私は(21年の)全仏を棄権したときに初めてメンタルヘルスの話を聞いたわ。暗い子ども時代を過ごしたとか、そういうことではなく、私はこれまでの人生がテニス中心だっただけ」と締めくくった。

文●中村光佑

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