海外テニス

「完璧な形でキャリアを終えることができた」テニス界の英雄、フェデラーが今振り返る引退時の心境<SMASH>

中村光佑

2023.08.06

ユニクロのイベントに出席し、引退時の胸の内を明かしたフェデラー氏。最高の幕引きに「ホッとした」と語る。(C)Getty Images

 昨年9月の「レーバー・カップ」で惜しまれながら輝かしいキャリアに別れを告げた男子テニス元世界ランク1位のロジャー・フェデラー氏(スイス/41歳)。世界中のファンに愛されてきた"テニス界の英雄"は「自分の理想の形で引退できたことを幸せに思っている」と振り返る。

 フェデラー氏は、自身がグローバルアンバサダーを務める日本の大手衣料メーカー「ユニクロ」が現地8月2日にアメリカ・ニューヨークで開催した"次世代の若手育成プロジェクト"に出席。プロテニスプレーヤーを志す子どもたちへのコーチングセッションでは、現役時代に多くのファンを魅了してきた片手バックハンドの代わりに両手バックのお手本を披露するなどイベントを大いに盛り上げた。

 同イベントで記者団の取材に応じたフェデラー氏は、初めに長期間悩まされてきた右ヒザのケガでキャリアの終焉を余儀なくされたことについて、以下のようにコメント。

「試合がなく、周りにファンがいない日々、そして25年間自分の人生を支配してきた(過酷な)スケジュールがない生活を送ることになった時、自分でもそれをどう受け止めるべきか全くわからなかった。長い間、僕は戻ってきてもう一度頑張り、健全な状態で試合を終えようと努めたが、それは不可能だった」

 続けてフェデラー氏は、昨年7月に自身が歴代最多8度の優勝を誇る四大大会「ウインブルドン」のセンターコート100周年記念式典に出席した際の心境を回顧。当時は引退を間近に控える中で「再びプレーできるかどうかまだわからなかった」ため、「式典中はとても感情的になった」という。
 
 一方で現役生活を終えて約1年がたつ今は「全く違う気持ちだ」とフェデラー氏は語る。「父が『座って試合を見ているのではなく、コートでプレーしていればよかったと思わないか?』と言ってきた時も、僕は『いや、試合を見て楽しんでいる。それで満足している』と答えたよ」と明かした。

 引退前の約3年間はテニス界が新型コロナウイルス感染拡大の影響を受けたことで、度重なる手術を施した自身のヒザのケガを含め「全てが(リセットされて)落ち着いた感じになった」と振り返る。最終的には栄光の歴史に幕を閉じるという苦渋の決断を下さざるを得なかったことについて「ホッとしたよ」と述べたフェデラー氏は、改めて次のように語った。

「最後には安心して引退できて幸せだった。レーバー・カップでは完璧な形でキャリアを終えることができた。その時は僕の周りに最大のライバルたちに加え、家族や友人もいた。僕は"もう引退しても大丈夫だろう"という感じだった。もうむずがゆい気持ちを抱く必要もないのだと思えた」

 公式戦の舞台でフェデラー氏のプレーを見られないのは非常に残念だが、今後は様々な形でテニス界に恩返しをしてくれることだろう。第2の人生も幸多からんことを願うばかりだ。

文●中村光佑

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【動画】イベントで両手バックを披露するフェデラー氏