「昨晩は、今日の試合で負ける夢を見るぐらい意識してしまった」
「昨日寝る前に、今日の試合のことを考えすぎて、前の日から緊張していました」
東レ・パンパシフィックオープンテニス、ダブルス準決勝を終えた穂積絵莉と二宮真琴は、いずれも「相手を意識していた」と繰り返した。彼女たちが意識した相手とは、加藤未唯。3人はジュニア時代から、時にネットを挟んで対峙し、時にネットの同じサイドに立ち、幾度も幾度も同じコートを共有してきた、1994年生まれの同期である。
特に二宮にとって加藤は、2018年に東レPPOで優勝した時のダブルスパートナー。
「加藤さんのプレーは、よくわかっている。わかっているだけに、どういうことをしてくるか、されるかをすごく考えて、『だから私はこうやって攻めようか、いつもと違うことをして、違う攻め方をした方がいいのかな?』とか考えてしまって……」
パートナーのその言葉に、穂積も「私もまったく一緒です」と思いを重ねる。
「同じ94年生まれで、本当に小さい頃から一緒にやってきて、ライバルで仲間でもある。彼女の良いところも良くないところも知っていますし、彼女は、私たちの良いところも悪いところもわかっている。どういうふうに攻めて、どういうふうな作戦でいこうかということばかり考えてしまった」
それでも最後は、「結局は、自分たちのやるべきことをやるだけ」と口を揃える。全仏オープン準優勝の経験も持つ二人の強みは、穂積の安定かつ攻撃的なストロークと、前衛での二宮の鋭い動きの連携。勝利を決めたのも、この黄金パターンだ。
「メチャメチャしょぼいリターンだったんですけど、最後、彼女(二宮)が動いてくれたので助かった」
穂積が恥ずかしそうに笑った。
長年の盟友とのケミカルを深める穂積と二宮に対し、今大会の加藤は不動のパートナーとも言えるアルディラ・スチアディが、アジア大会出場のため来日できず。ナディア・キチェノクとは今回が初結成のうえ、直前までメキシコで開催のグアダラハラ大会に出ていたため、練習時間も限られた。
「彼女(キチェノク)はストロークもサービスも良いんですが、どう動くかが、はっきりとはわからなかった」
そうこの3試合を振り返る加藤は、「初めての人と組む難しさを、今回は初めて知った」とも言った。
今回は、高地のグアダラハラから、標高もボールもサーフェスも異なる有明へと移り、適応の困難に直面した大会でもある。ボールの飛びが変われば、ストリングスなどの調整も変わる。
「若い頃は、そんなことを気にせずやっていたと思うんですけど」
“94年組”の元気印は、「経験を積むと、難しいことも出てきますね」と、苦味の混じる笑みをこぼした。
10代から互いを知る同期たちは、移り行く時の中で関係性や立場を変え、それでも同じ戦いの舞台を旅し足跡を交錯させていく。
加藤は、敗戦の翌日には、次の戦地である中国へ。
そして穂積と二宮は、センターコートに組まれる決勝戦へと挑む。
取材・文●内田暁
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特に二宮にとって加藤は、2018年に東レPPOで優勝した時のダブルスパートナー。
「加藤さんのプレーは、よくわかっている。わかっているだけに、どういうことをしてくるか、されるかをすごく考えて、『だから私はこうやって攻めようか、いつもと違うことをして、違う攻め方をした方がいいのかな?』とか考えてしまって……」
パートナーのその言葉に、穂積も「私もまったく一緒です」と思いを重ねる。
「同じ94年生まれで、本当に小さい頃から一緒にやってきて、ライバルで仲間でもある。彼女の良いところも良くないところも知っていますし、彼女は、私たちの良いところも悪いところもわかっている。どういうふうに攻めて、どういうふうな作戦でいこうかということばかり考えてしまった」
それでも最後は、「結局は、自分たちのやるべきことをやるだけ」と口を揃える。全仏オープン準優勝の経験も持つ二人の強みは、穂積の安定かつ攻撃的なストロークと、前衛での二宮の鋭い動きの連携。勝利を決めたのも、この黄金パターンだ。
「メチャメチャしょぼいリターンだったんですけど、最後、彼女(二宮)が動いてくれたので助かった」
穂積が恥ずかしそうに笑った。
長年の盟友とのケミカルを深める穂積と二宮に対し、今大会の加藤は不動のパートナーとも言えるアルディラ・スチアディが、アジア大会出場のため来日できず。ナディア・キチェノクとは今回が初結成のうえ、直前までメキシコで開催のグアダラハラ大会に出ていたため、練習時間も限られた。
「彼女(キチェノク)はストロークもサービスも良いんですが、どう動くかが、はっきりとはわからなかった」
そうこの3試合を振り返る加藤は、「初めての人と組む難しさを、今回は初めて知った」とも言った。
今回は、高地のグアダラハラから、標高もボールもサーフェスも異なる有明へと移り、適応の困難に直面した大会でもある。ボールの飛びが変われば、ストリングスなどの調整も変わる。
「若い頃は、そんなことを気にせずやっていたと思うんですけど」
“94年組”の元気印は、「経験を積むと、難しいことも出てきますね」と、苦味の混じる笑みをこぼした。
10代から互いを知る同期たちは、移り行く時の中で関係性や立場を変え、それでも同じ戦いの舞台を旅し足跡を交錯させていく。
加藤は、敗戦の翌日には、次の戦地である中国へ。
そして穂積と二宮は、センターコートに組まれる決勝戦へと挑む。
取材・文●内田暁
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