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全日本テニス、第1シードの加治遥が西郷里奈を下し初の女王に! 11回目の挑戦で「やっと取れた」<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2023.11.04

初優勝を決めた加治遥はその瞬間、大きくバンザイ(左)。決勝は西郷里奈(右)の攻撃を頑強なストロークで跳ね返した。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

初優勝を決めた加治遥はその瞬間、大きくバンザイ(左)。決勝は西郷里奈(右)の攻撃を頑強なストロークで跳ね返した。写真:田中研治(THE DIGEST写真部)

 テニスの日本チャンピオンを決める「三菱電機ビルソリューションズ 全日本テニス選手権98th」(10月28日~11月5日/東京・有明/ハードコート)は11月4日に第8日を迎え、シングルスの女子決勝、男子準決勝が行なわれた。女子決勝は第1シードの加治遥と第2シードの西郷里奈による頂上決戦。加治が6-3、6-2でストレート勝ちし、初優勝を飾った。

 29歳、園田学園女子大を卒業後にプロ転向して7年目の加治が、ついに全日本の頂点に上り詰めた。上位選手の多くが全日本をスキップしがちな昨今、11年連続で出場を続ける加治にとって、このタイトルには強い思い入れがある。「全日本の優勝はテニス人生において大きな意味を持つ」と重視し、「トライし続けて取れていないので、取ったら1個成長、ステップアップになる」と信じる。

 過去の最高成績はベスト4。それが今回、一気に壁を破れたのは、たまたまではない。コツコツと努力を積み重ねて力を付け、今年は全米オープンでキャリア初となるグランドスラム予選出場を達成、世界ランクも自己最高の213位をマークした。

 加治のどこが成長したのか。本人いわく、「1球1球、質のいい球を打つこと」や「フィジカルで走り負けないこと」などに、このところ取り組んできたという。それが実を結んできたのが最近の活躍であり、この日の西郷との決勝でもそれは遺憾なく発揮されていた。

 東レPPOの予選を2年続けて突破したことからもわかる通り、西郷もツアーレベルの強打を持ち、当たった時の爆発力は凄まじい。しかし、加治はベースとなるショットのスピードや深さ、コースがコンスタントにハイレベルで、ウイナーの数では西郷に引けを取っても、ラリーの主導権は渡さない。
 
「攻め込まれて体勢を崩されても、そこでちゃんと強く押し返せるように意識してやった。相手が攻め急いでくれたりしたので、そこはうまくいったのかなと思う」と加治。強化したショットの質やフィジカルがモノを言った格好だ。アグレッシブに攻め続けた西郷だが、「追い込めそうで追い込み切れないという展開が続いて、厳しい試合になった」と言うように、加治の粘りに跳ね返されて最後はミスを犯し、スコアは開いていった。

 ラリー自体は互角に見えながらも、加治はピンチの時ほど堅固なプレーを見せ、ブレークポイントを10本中8本セーブ。第2セットの立ち上がりでは、西郷のサービスを40-0からブレークし、自分のサービスは0-40からキープしてみせ、流れをつかんだ。内容の濃さに比べてスコアに差がついたのは、加治がそれだけ重要なポイントを押さえたということだ。

 11回目の挑戦でようやく手にした栄冠に、加治は「優勝できてほんとにうれしい。やっと取れたなというのが正直なところです」と喜んだ。そして「今年は色んな経験ができた年だった。それをもっとジャンプアップできるように、来年以降もトライしていきたい」と、今後の飛躍を誓った。具体的にはグランドスラムの予選を上がり、本戦で活躍すること――今も成長を続ける彼女なら、手が届く目標のように感じる。

◆女子シングルス決勝の結果(11月4日)
○加治遥(島津製作所)[1] 6-3 6-2 西郷里奈(東急スポーツシステム)[2]●

※[ ]内の数字はシード順位

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

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