国内テニス

1000万円を懸けたSBCドリームツアー、男子は徳田廉大が制し「充実した遠征を送りたい」。女子は「いつも以上にこすって」伊藤あおいが優勝!<SMASH>

内田暁

2023.12.18

SBCドリームツアー・ファイナルラウンド、左から男子3位の望月勇希、準優勝の中川直樹、優勝の徳田廉大、女子優勝の伊藤あおい、準優勝の川岸七菜、3位の清水綾乃。写真:SBC DREAM ENNIS/長浜功明

「お金を貯めるのではなくて、贅沢なぐらいコーチとトレーナーを付けて、充実した遠征を送りたいなと思います」

 優勝者は、落ち着き払った声で言う。

 国内最大の規模を誇る賞金大会"SBCドリームテニスツアー"。その男子ファイナルラウンドを制したのは、今年の全日本選手権チャンピオンでもある徳田廉大だった。

 全日本王者の肩書きを取り、「グランドスラム出場」を次なる明瞭なゴールに定める徳田にとって、今大会の目標は優勝ただ一つ。昨年優勝者の清水悠太のように、優勝賞金を元手にトレーナーをツアー帯同させ、キャリア最高位の更新を徳田も視野に捉えている。

 1セット4ゲーム先取のショートセットとはいえ、1日に3試合を戦うこの大会のフォーマットは、どの選手にとっても過酷だ。特に徳田は、昨年痛めたヒザに爆弾を抱えている。今回も初日の3試合を終わった時点で「ヒザに水が溜まっていた」とも明かした。

 それだけに、決勝戦で「今大会最高のスタートが切れたこと」に、本人も驚いていたという。対戦相手の中川直樹とは、過去負けなし。そのような相性の良さも、精神面に影響を及ぼしていただろう。
 
「このショットが決まれば、調子がどんどん上がってくる」と徳田が指標とするバックハンドのダウンザラインが、小気味よくコートに刺さる。第1セットは徳田が4-0で瞬く間に奪取。第2セットも3-1と徳田がリードし、頂点へのサービスゲームを迎えた。

 この時、優勝賞金1,000万円の重さが、徳田の右肩にのしかかる。ファーストサービスが入らず、ショットも次々にネットを叩きブレークダウンの危機。

「自分でも、何やってんだと思って。15-30になった時は、ちょっと笑っちゃうぐらい緊張していて」

 後に徳田が、恥ずかしそうに笑みをこぼす。

 そんな硬さをぬぐうためにも、マッチポイントでは「サーブ&ボレーに行くと決めていた」。ファーストサービスはフォールトとなるも、決意は揺るがない。セカンドサービスを打ち込むと同時に、迷いなく足は前に。狙いすましてボレーを決めると、勝利の咆哮を上げた。

 全日本選手権、そして今大会と続けて結果を出せている理由を、本人は「気持ちの面で、普段の練習の時から前向きに考えるようにしてきた」と分析する。ケガに苦しむも、最後は最高の形でシーズンを終えた25歳は、前傾姿勢で来シーズンへと向かっていく。
 
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女子は19歳の伊藤あおいが緩急で揺さぶり優勝!