専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

中東カタール開催の女子テニス大会で見られた「進化しつつある女性たちの権利」<SMASH>

内田暁

2024.02.14

アラブ系選手のオンス・ジャバーは現在開催中のカタール・オープンで「(女権に関して)大きな進化を見ることができる」と語る。(C)Getty Images

アラブ系選手のオンス・ジャバーは現在開催中のカタール・オープンで「(女権に関して)大きな進化を見ることができる」と語る。(C)Getty Images

 スポーツを通じ、いかに男女同権を実現していくか――。

 それは1973年に、時の女子テニストップ選手のビリー・ジーン・キングが中心となって「WTA」(女子テニス協会)を発足して以来、一貫してきた理念だ。

 それから50余年が経ち、女性スポーツを取り巻く環境も大きく変わった。ただその中でもイスラム文化圏は、最後まで壁が立ちはだかる地域かもしれない。

 イスラム文化圏という言い方はあまりに乱暴で、その内実は国や地域によって様々だ。最も女権の制約が多いと言われるサウジアラビアでは、女性の自動車運転が認められたのは、2018年6月のこと。同性愛は未だ犯罪と見なされているため、WTAがサウジアラビアで大会を開くか否かには、数年前から大きな議論となってきた。

 現在、行なわれている「カタール・オープン」の開催地カタールは、ペルシャ湾に突き出す小さな半島の国家である。国土面積は秋田県より少し大きい程度だが、石油・天然ガスのため経済的には豊か。22年のサッカーワールドカップ開催により、世界中にその名を改めて知らしめた感が強い。

 女性のスポーツ参画ということで言えば、カタールは12年のロンドンオリンピック・パラリンピックを控えた時点で、「女性選手代表が参加したことのない、世界に3つしかない国の一つ」であった。ロンドンオリンピックで初めて、水泳、陸上、卓球、そして射撃の4競技に一人ずつ、女子アスリートが参戦した。
 
 カタールで女性のスポーツ国際大会が初めて開催されたのが、1998年の陸上競技会。それが、女性が観戦を許された初のスポーツイベントだと言われている。

 WTAの「カタール・オープン」が開催されたのは、その3年後の2001年。初代優勝者は、マルチナ・ヒンギスである。その後、年を重ねるごとに大会のグレードも上がり、今年はグランドスラム(四大大会)に次ぐカテゴリー「WTA1000」としての開催だ。
 
 大会会場を歩いていると、ヒジャブ(頭や身体を覆う布)をまとった人々の姿を目にはするが、他国のテニスイベントとほとんど変わらぬ光景が広がっている。大会運営スタッフにも女性は多く、会場内のショップやフードコートでも、働く女性の姿は多い。アラブ系女性のシンボル的存在であるオンス・ジャバー(世界6位/チュニジア)の参戦も、大会に象徴的な彩りを加えているだろう。
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号