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海外テニス

約50年の記録に終止符。チチパスのトップ10陥落により片手バックハンドの選手が10位以内から消滅<SMASH>

中村光佑

2024.02.20

1972年にATPが創設されてから初めて片手バックの選手が10位以内から脱落。近年では安定性を発揮しやすい両手バックが主流となっている。(C)Getty Images

1972年にATPが創設されてから初めて片手バックの選手が10位以内から脱落。近年では安定性を発揮しやすい両手バックが主流となっている。(C)Getty Images

 現地2月19日に更新されたATP(男子プロテニス協会)の世界ランキングで、ステファノス・チチパス(ギリシャ)が2019年3月から約5年にわたって維持してきたトップ10から陥落した。これにより男子ツアーで約50年もの間守られてきた“ある記録”にも一旦終止符が打たれることとなった。

 ケガの影響もあって低空飛行が続いているチチパスは、先の「全豪オープン」(オーストラリア・メルボルン/四大大会)でもベスト16に進出したものの昨年大会準優勝で得たポイントはディフェンドできず。大会後に7位から10位にランキングを落としたチチパスは全豪以来ツアー大会には参加しておらず、トップ10陥落は時間の問題となっていた。

 そうした中で先週の「デルレイビーチ・オープン」(2月12日~18日/アメリカ・デルレイビーチ/ATP250)では3,150ポイントで9位につけていたテイラー・フリッツ(アメリカ/現10位)が優勝し、同日程で行なわれた「ABNアムロ・オープン」(オランダ・ロッテルダム/ATP500)では2,970ポイントで11位だったアレックス・デミノー(オーストラリア/現9位)が準優勝。この2人の獲得ポイントの関係上、チチパスが10位圏外(11位)となることが決まった次第だ。
 
 ロッテルダム大会でベスト4入りしたグリゴール・ディミトロフ(ブルガリア/現13位)が準決勝でデミノーに勝って決勝に進んでいれば、フリッツの結果次第では18年10月以来約5年4カ月ぶりとなるトップ10復帰の可能性があったが今回は残念ながらお預け。この結果1972年にATPが創設されてから初めて片手バックハンドの選手が10位以内から脱落するという何とも寂しい記録が作られることとなってしまったわけだ。

 ただ裏を返せば元世界王者のロジャー・フェデラー氏(スイス/22年に引退)を筆頭に、それだけ多くの片手バックのプレーヤーが名を馳せてきたと解釈できる。

 現時点でもチチパスとディミトロフに加え、ロレンツォ・ムゼッティ(イタリア/26位)、クリストファー・ユーバンクス(アメリカ/34位)、ダニエル・エバンズ(イギリス/42位)の計5人の片手バックの使い手がトップ50に入っており、共に片手打ちの名手で元世界3位のドミニク・ティーム(オーストリア/現89位)とスタン・ワウリンカ(スイス/現67位)の再起にも期待が寄せられている。

 近年は安定性を発揮しやすい両手バックが主流となっているが、それでも片手バックの優雅さや芸術性に魅了されるファンは依然として多い。だからこそ片手バックの使い手が活躍し続けるのはATPツアーにとって非常に重要なことである。チチパスはもちろん、またすぐに片手打ちの選手がトップ10に戻ってくる日を心待ちにしたい。

文●中村光佑

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