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グランドスラムの舞台に帰ってきた錦織圭、右肩負傷で途中棄権も2試合の中で見えた“光”【全仏オープン】<SMASH>

内田暁

2024.06.01

全仏オープン2回戦では、世界15位シェルトンの強力なサービスに果敢に立ち向かった錦織。ラリー戦では優位に立つ場面も多く見られた。(C)Getty Images

 再び降り出した霧雨が、第2セットが終わった直後の、7番コートに落ち始めた。

 姿を現したスタッフたちが、オレンジ色のビニールシートで赤土を覆うと、続行を望む観客たちはブーイングを飛ばす。直後に音を立てて落ちる、大雨。当分、試合が中断するだろうことは、この時点で明白だった。

 「錦織圭が、今からメインインタビュールームで会見を行ないます」というアナウンスがプレスルームに流れたのは、その中断の約45分後。この時点でプレスルームの人々は、錦織の棄権を確信した。

 テニスの四大大会「全仏オープン」2回戦、ベン・シェルトン対錦織圭の一戦が始まったのは、29日。第1セットのゲームカウント5-5の時点で雨天中断となり、そのまま翌日に持ち越された。

 21歳のシェルトンは、時速230キロ超えのサービススピードを叩き出す、現代の超ビッグサーバー。昨年10月に、東京開催のジャパン・オープンを制した雄姿を、記憶している人も多いだろう。

 本格的にプロツアーを転戦し始めたのは昨年からで、まだまだ粗削りな部分もある。全仏オープンも、今年が2度目の参戦。昨年まで、グランドスラム(四大大会)どころか海外に行ったことすらなかったアメリカの大学生にとっては、まだ何もかもが新鮮で、ゆえに、猛烈なスピードで適応中でもある。
 
 赤土初体験の昨年と比べ、今回最も上手く適応できている点を、シェルトンは「サーブ」だと言った。

「去年は、どの球種をどこに打つべきかわからなかった。ここではフラットサーブの威力が削がれるので、フラストレーションがたまり、怒り、ダブルフォールトが増えたりしたが、今年はその点が良くなった」
 
 この言葉が意味するところは、錦織戦でも存分に発揮される。時速227キロのフラットをセンターに叩き込んだと思えば、左腕からワイドに鋭く切れていくスライスサービスを放つ。錦織がプレッシャーを掛けるべく前に出れば、跳ねるサービスを身体の正面に打ち込んだ。

 単に速いだけではない。この一年でシェルトンは、課題を急速に克服していた。
 
 同時に驚くべきことは、このクラスの選手と戦うのは約10カ月ぶりの錦織が、シェルトンのサービスをも攻略しつつあったことだ。
 
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「このサーブと動きでも、ここまでプレーできる」と手応え