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海外テニス

なぜ禁止薬物検出のシナーは許されたのか? 元ATPドーピング責任者が見解「規則は文面通りに守られていた」<SMASH>

中村光佑

2024.08.22

今年3月のBNPパリバ・オープンでベスト4に進んだシナー。そのドーピング検査で禁止薬物が検出された。(C)Getty Images

今年3月のBNPパリバ・オープンでベスト4に進んだシナー。そのドーピング検査で禁止薬物が検出された。(C)Getty Images

 テニス界で波紋を広げているヤニック・シナー(イタリア/男子世界1位)のドーピング問題。同選手は即時に無実が証明されたが、それに対する疑問の声は絶えない。

 テニスの不正行為を監視する第三者機関「ITIA」の8月20日の発表によると、3月の「BNPパリバ・オープン」におけるドーピング検査で、シナーの検体から低濃度ながら禁止物質の「クロステボル」が2度にわたり検出された。シナー側のITIAへの説明では、サポートメンバーの1人が自身の傷を治療するためにクロステボル入りのスプレーを肌に塗り、その手でシナーにマッサージ等を施したため、禁止物質が体内に入ったという。

 また海外メディア『UBITENNIS』によると、シナーが足に小さな傷ができる乾癬性皮膚炎を患っているにもかかわらず、同サポートメンバーがマッサージ提供時に手袋を着用していなかったため、禁止物質が取り込まれやすい状況が半ば強制的に作られてしまったそうだ。
 
 通常禁止物質が検出されると自動的に暫定出場停止処分が適用されるが、同時に選手には処分解除を求める異議申し立ての権利が付与される。シナーはこの権利を行使して認められたため、3月以降の大会でも問題なくプレーできた。そして各種調査や非営利団体「スポーツ・レゾリューション」での審問の結果、今回の違反は故意ではなく、選手本人の過失も特になかったと判定され、シナーの資格は停止されず、ポイントと賞金の没収だけにとどめられた。

 今回の一件における大きな疑問は、騒動の一部始終が公になるまでになぜここまで時間を要したのかという点。また過去にドーピング違反が発覚し長期間の出場停止を強いられた選手に比べると、シナーが異常なほど早期に問題を解決できたのも不可解である。

 そこで『UBITENNIS』は、2001年から05年までATP(男子プロテニス協会)のアンチ・ドーピング・プログラムの責任者を、05年から10年までオーストラリア・スポーツ・アンチ・ドーピング機構のCEO(最高経営責任者)を務めたリチャード・イングス氏に独占インタビューし、見解を求めた。同氏はシナーが大会に出続けていた理由や騒動の公表が遅れた背景、即時の無実証明が成立した要因等をこう説いた。
 
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