海外テニス

世界1位シナーのドーピング問題を受け、解雇された理学療法士が別れを告げる「もう一緒にいられないと思うとつらい」<SMASH>

中村光佑

2024.08.26

シナー(写真中央)のドーピング問題により解雇となった理学療法士のナルディ氏(写真左)が、自身のSNSを通じて別れの言葉を綴った。(C)Getty Images

 男子テニス世界ランク1位のヤニック・シナー(イタリア/23歳)が、波紋を広げている自身のドーピング問題を受け、理学療法士のジャコモ・ナルディ氏とトレーナーのウンベルト・フェラーラ氏を解雇した。

 既報の通りシナーは3月の「BNPパリバ・オープン」におけるドーピング検査で、提出した検体から低濃度ながら禁止物質の「クロステボル」が2度にわたり検出。シナー側は禁止物質が体内に入った理由について、ナルディ氏が自身の傷を治療するためにクロステボル入りのスプレーを肌に塗り、その手でシナーにマッサージ等を施したためだったと説明していた。そのスプレーをナルディ氏に提供したのが、トレーナーのフェラーラ氏だったとされている。

 シナーには一時暫定的な出場停止処分が科されたが、異議申立てが認められすぐさま処分は解除。その後の調査でも、違反が故意ではなく過失もなかったと判定され、シナーは出場処分されずに決着したという。

 そして、今季最後の四大大会「全米オープン」(8月26日~9月8日/アメリカ・ニューヨーク/ハードコート)に第1シードで出場するシナーは、先日開かれた記者会見でナルディ氏とフェラーラ氏の解雇を報告。両者への感謝の言葉を交えて次のように話した。

「彼らの存在は僕のキャリアにおいて大部分を占めてきた。我々は素晴らしい仕事をして多くの成功をもたらし、素晴らしいチームに支えられてきた。だがこうした過ちにより、今は共に仕事を続ける自信がない。ここ数カ月、僕はとても苦労していた。今はただクリーンな空気を求めている」
 
 そして25日にはナルディ氏がインスタグラムを通じ、メディアの報道姿勢への不満を表現するとともに、数枚の思い出写真を添えてシナーへの別れの言葉を綴った。

「正義に2つの道があるのは事実です。1つは裁判所によって認められた真の正義で、もう 1つはメディアによって認められた正義です。後者は通常あまりにも表面的であり、その事実は公にされているのに、それに基づいていることはほとんどありません。

 私は第三者として、もしそれが人々やその評判を裁き、作り上げ、あるいは壊すこと以外にないとしたら、司法事件をクローズアップする目的は一体何なのだろうかと常々疑問に思っていました。私が騒動の主人公になっている今日、そのことを確信しました!」

「1年半前、私は優秀な人々や優れた専門家、旅の仲間で構成される素晴らしいチームに加わりました。彼らと一緒に、私は喜びと苦しみの瞬間を経験しながら、(様々な)感情を共有し、勝利と敗北を味わいました。

 (中略)私はこの素晴らしいチームの一員であったことを誇りに思います。もう彼らと一緒にいられないと思うとつらいし、一緒にボックス席でヤニックを応援できないのもつらいけど、早く慣れないといけないですね。チームのみんな、ありがとう。それは美しい旅であり、忘れられない物語でした(以下略)」

 今回の決断はまだ騒動の収束が見えてこない中でのシナーなりのけじめなのかもしれない。とはいえ全米オープンが始まってからもしばらく混乱は続きそうだ。

文●中村光佑

【画像】理学療法士のナルディ氏が自身のインスタグラムでシナーへ別れの言葉を綴る

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【画像】理学療法士のナルディ氏が自身のインスタグラムでシナーへ別れの言葉を綴る

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