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シナー躍進の鍵はサービスにあり! 歴代サービス王がそのポイントを分析「約10%向上した」「今も上達し続けている」<SMASH>

スマッシュ編集部

2024.09.04

ストロークに目が行きがちだが、最近のシナーのサービススタッツは軒並み向上しており、歴代サービス王もその上達ぶりを賞賛する。(C)Getty Images

 男子テニスの世界王者、ヤニック・シナー(イタリア)といえば、盤石のストロークを持つベースライナーとしての印象が強い。だが、全豪オープンで四大大会初優勝を果たし、全仏オープン後に初めて世界1位の座についた今季の躍進の鍵は、サービス力の進化にありそうだ。

 実際、この23歳のサービススタッツは軒並み向上し、トップクラスにある。ATP公式サイトが、その進化について歴代サービス王の視点も交えながら考察している。

 今季(全米オープン前まで)のシナーは、サービスキープ率、セカンドサービスのポイント獲得率、ブレークポイントのセーブ率が堂々のツアートップ。ファーストサービスのポイント獲得率は、グリゴール・ディミトロフ(ブルガリア)に次いで2番だ。2023年の自身の数字と比較すると変化は鮮明で、キープ率は84.6%から91.3%へ、1stサービスのポイント獲得率は70.6%から79.5%へ、2ndサービスの獲得率は49.5%から57.5%へ急上昇した。

 シナー本人も、以下のようにサービス改良への取り組みを認めている。

「まだ安定しないところがあるけど、ここ3、4カ月で安定してきているのは確かだ。トスやメンタル面で幾つかのことを変更したんだ。エースを狙うとか、そういうことではなく、時にはもう少し回転をかけてプレーするようにしているところが、これまでと違う」

 歴代2位のサービスキープ率91.8%(キャリア通算)を誇るジョン・イズナー(アメリカ)は、シナーのフォーム改造を指摘する。

「(コーチの)ダレン・ケーヒルと組んでから、シナーのサービスモーションがプラットフォーム(両足を固定するタイプ)からピンポイント(右足を寄せるタイプ)に変わった。僕も含めて多くの人が気付いているよね」
 
 それはイズナーが考える理想的な打ち方だという。

「彼のサービスは私とかなり似ているし、私の考えでは、それが優れたサービスのやり方だ。簡単な変更のように思えるけど、決してそうではない。結果、彼のサービスの数字はとても良くなった」

 今季のシナーはキープ率でイズナーに近い数字を残しているが、中身は全く違うものだとイズナーは言う。

「彼は私のように膨大なエースを取るわけではないが、プレースメントが良ければラリーをより早く支配できる。彼は誰もが知る世界最高のベースライナーの1人だからね。彼はサービスだけで約10%向上したように思えるよ。彼が世界1位に上り詰めた大きな理由だろう」

 また、1試合平均エース数で歴代3位のライリー・オペルカ(アメリカ)は、先頃長期のケガから復帰したが、シナーの上達ぶりに驚いたという。

「ヤニックは大きく成長した。もともとうまかったから、誰もそれについて語らないけどね。私がツアーを離れた時、彼のサービスは素晴らしいものではなかった。ボールを早く打ちすぎて、エラーを頻発していた。今はずっと良く、自分のスポットで捉えて、リズムも変化した」

 かつてシナーと組んでダブルスタイトルを獲得したオペルカは、シナーの人間性を絶賛しつつ、若き世界1位の成長に舌を巻く。

「若い選手だから上達するとは思っていたけど、彼は今も上達し続けている。恐ろしいことだよ」

 歴代サービス王をもうならせるシナーのサービス。そのクオリティの高さはもっと注目されていい。

構成●スマッシュ編集部

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