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海外テニス

本人も「初めての経験」と笑う“珍事”の末にツアー初勝利!岡村恭香が憧れの舞台でチャンスをつかむ<SMASH>

内田暁

2024.10.23

東レPPOで予選敗退を喫した岡村だが、ラッキールーザーで本戦入り。1回戦では、今大会の予選決勝で対戦しているバプティストとの再戦を制した。写真:滝川敏之

東レPPOで予選敗退を喫した岡村だが、ラッキールーザーで本戦入り。1回戦では、今大会の予選決勝で対戦しているバプティストとの再戦を制した。写真:滝川敏之

 WTAツアー初勝利は、サービスエースで決めたかに見えた。

 時速160キロ超えの好サービスが、相手の反応を許さずコートに刺さる。一度は、天を仰ぎ笑みを広げたが、線審の「アウト!」の声に、振り上げかけた拳を下げた。

 そうして迎えた、仕切り直しのセカンドサービス——。きっちり相手のボディに打つと、バックの打ち合いからフォアに展開。相手のフォアがラインを割ると、今度こそ勝利を確信し、左手の拳を小さく振り上げる。

 29歳の岡村恭香にとって「東レ パン パシフィック オープンテニストーナメント」(ハードコート/WTA500/以下東レPPO)本戦は、4度目の挑戦で初めて立った「子どもの頃から憧れた」夢舞台。対戦相手のヘイリー・バプティスト(アメリカ)からは、3度目の対戦でつかみとった初勝利だった。

 もっとも、岡村がバプティストと最後に対戦したのは、わずか二日前のことである。今大会の予選決勝で当たり、その時は岡村が3-6、5-7で敗れていた。

 本来ならこの時点で、初の東レPPO本戦出場もついえたはず。ただ本戦に欠場者が出たため、繰り上がり(ラッキールーザー)で巡ってきた僥倖だった。

 その本戦初戦で当たったのが、予選突破者のバプティストである。岡村も「長くなってきた私のキャリアの中でも、初めての経験」と小さく笑う珍事。同時に「直ぐに敗因を分析し練習して戦えるのは、幸いなこと」と、この奇妙な縁を好機ととらえた。
 
 ラッキールーザーでの出場権と、直近で敗れた相手との再戦。加えて岡村は今大会、もう一つ、自分に運気が巡ってきたと思える根拠があった。それが、予選のワイルドカード(主催者推薦)をもらえたこと。実は岡村、今大会へのエントリーをミスしたため、ワイルドカードなしでは予選出場もならなかったのだ。

「さっき、キャリアが長くなってきたと言っておきながら、恥ずかしい話にはなるのですが……」

 やや口ごもりながら、岡村が打ち明ける。つまりは、ランキング的には出られたはずが、ワイルドカードでなければ出場権利すらなかった状態。

「若い期待の選手がどんどん出てくるなかで、自分にはチャンスは巡ってこないだろうな」

 そう半ば諦めていた中で、得られたのが今回のワイルドカードだった。これまで、どこかで「自分には運がない」と思っていた岡村に、まるで帳尻を合わすかのように、次々チャンスが舞い込んでくる。

「本当に、プレーできるだけで幸せだ」

 そんな幸福感を胸に、岡村は本戦のコートに立ったという。
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