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国内テニス

兄と妹の二人三脚が生んだ快進撃、岡村恭香ベスト4進出!【島津全日本室内テニス選手権】<SMASH>

内田暁

2022.12.24

第2シードのビッカリーをフルセットで破り準決勝進出を果たした岡村恭香。その影には兄一成の冷静なサポートがあった。写真:京都府テニス協会

第2シードのビッカリーをフルセットで破り準決勝進出を果たした岡村恭香。その影には兄一成の冷静なサポートがあった。写真:京都府テニス協会

 相手のフォアがラインを割った時、妹はコート上で叫び、兄は客席で大きく息を吐き出した。

「自分で試合するより、疲れますね」

 憔悴しきった表情で、兄はなんとか笑みを作る。

 兄、岡村一成。ATPランキング1256位の現役選手であり、妹のコーチでもある。

 妹の岡村恭香は、WTAランキング301位。現在、京都市で開催中の島津全日本室内テニス選手権で、第2シードのサーシャ・ビッカリーを6-4、6-7,6-4で破り、ベスト4に勝ち進んだ。

 兄妹が地元の岡山県でテニスを始めたのは、二人ともに4歳の頃。3歳年少の妹がテニスをしたいと思ったのは、「兄がプレーする姿がかっこいいから」。以降、二人はプロへの道を、肩を並べるように歩んできた。

 プロ転向後は、揃って兵庫県のビーンズドームをホームコートとし、各々がそれぞれの戦いを重ねてきた。その兄と妹が、“コーチと選手”になったのは昨年の春。所属先である橋本総業が千葉県に新設したコートに、拠点を移した時だった。

 その時の胸中を、兄は「めちゃめちゃ怖かったです」と打ち明ける。

「自分は、コーチとしてまだまだ経験はない。もちろん、ビーンズドームで教わっていたコーチの皆さんに適うわけはない。ただタイミングとしては、一度2人で突き詰めてみるのも良い時期かなと思いました」

 思ったというか、思うようにしたというか――そう兄は付け加えた。
 
 他方、妹は「兄をコーチにすること自体には、まったく怖さはなくて」とサラリと言う。

「兄の人生を、私に懸けてもらう怖さはありました。ただ自分のキャリアを考えた時、コロナ禍もあってなかなかランキングも上がらず、けっこう限界を感じていた時期だったんです。だったら、一番自分のことを理解している人に、見てもらおうと。それでダメだったら、それはもう仕方ないかって思えて」

 こうして二人は、再び二人三脚の旅をスタートした。

“コーチ”に就任した兄が、留意したのは「妹の良さを消さずに、欠点を直すこと」。恭香の持ち味にして最大の武器は、大柄な欧米勢にも打ち負けないフォアの強打だ。ただ当時の彼女のテニスは、「安定感を求めて良さが消えている」と兄の目には写った。

 そこで兄が妹に求めたのは、テニスというゲームの理解度。どのような目的でいかなるショットを打つのか? 相手の心理をどう読むのか? それはいわば、ラケットとボールで試合の設計図を書く作業だ。
 
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