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【伊達公子】全豪OPジュニア優勝の17歳、園部八奏に感じる大きな可能性<SMASH>

伊達公子

2025.03.07

「将来的には30位、20位に行けるポテンシャルはある」と言う伊達公子さん。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 今年の全豪オープン・ジュニアで優勝した17歳の園部八奏(そのべわかな)選手が、プロテニスツアーの「ムバダラ・アブダビ・オープン」の予選に主催者推薦で出場。これを見事勝ち上がり本戦に駒を進めると、1回戦で世界ランキング55位の選手に勝利し、2回戦で元世界2位のオンス・ジャバーと対戦しました。試合には敗れたものの、この結果ランキングは837位から464位にジャンプアップ。チャンスを生かしました。

 彼女は身長174センチでレフティー(左利き)という点が最大の強みです。フォアハンドはもちろんのこと、ネットプレーがアプローチからの展開、ボレーのテクニックも、今のジュニア年代としては積極的に使えています。これらをトータル的にみてグランドスラムジュニアで優勝できたのは十分納得ができます。

 また、選手は1週間を通して勝ち続けないと優勝できません。「勝ち切る力」というのはなかなか教えても簡単に学べるようなものではないため、勝ち切れる力をグランドスラムで出せたのは大きな強みと言えます。大会の終盤に向けてのテニスの調子、フィジカル、メンタルのギアの上げ方がバランス良く、ピーキングもうまくはまったのでしょう。

 ジュニアとはいえ疲れはあったと思いますが、その流れと自信を維持してアブダビの大会に臨みました。トッププロのレベルの中で自分なりに新しいものが見えてきている中で戦えたのではないかという印象があります。

 400位台になったことで、スケジューリングはしやすくなりますし、今年はもうジュニアの大会は出場せず一般の大会に移る方向になっていくでしょう。
 
 園部さんは14歳から一般のITF(国際テニス連盟)ツアーに出場して結果を出しています。日本国内で、ジュニアの大会だけに出場して勝っていると、「このままでいいんだ」という思いがどうしても出てきてしまいます。私は高校の時、大学生や男子選手と練習をすることで、「今のままではダメだ」と足りないものを常に突き付けられる状態にありました。

 勝つことで自信は生まれますが、勝てない相手とすることでモチベーションになったり、足りないものが見えることにつながっていきます。そういう意味で早い年代から一般の大会に出場していたことはプラスになったはずです。

 これからWTA(女子テニス協会)ツアーで戦う上でも、左利きは強みになります。左利き特有のワイドへのサービスがあり、オープンコートを作ってフォアで叩くのは基本パターンとしてあるでしょう。サービスではセンターもうまく使えますし、甘いボールはストレートへ展開したり、ネットに詰めたりという基本的な部分ができているので、WTAツアーデビューの段階としては良いと思います。

 ただし、それは今の段階の話です。ここから対戦相手も彼女のことがわかってきた中で試合をすることになります。その場合、フィジカル的な強さは必要になってきますし、対戦相手のレベルが上がった時にどうなるのか。

 ジュニアでは奇麗な自分のパターンでポイントを取れるけれど、ダメになった時はあっさりダメになることもあります。これからは崩れながらでも勝利をもぎ取れるようにならなくてはいけません。

 アブダビの大会で自分に足りない部分を気付かされたはずなので、その点を取り組んでいけば、今年更にブレークする可能性は十分にあると思います。将来的には30位、20位に行けるポテンシャルはあるので、それ以上はこれからの積み上げ方次第でしょう。

 昨年末には若手の石井さやかさんや齋藤咲良さんが活躍しました。それに園部さんが加わったことで、日本女子テニスの明るい光がさらに強い光になってきたと感じます。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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