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海外テニス

「まだなんか、全然駄目ですね」チャレンジャー初戦で快勝も、首をかしげる錦織圭の心の動き<SMASH>

内田暁

2025.03.13

ツアーの実力者たちが出場しているアリゾナ・チャレンジャーで初戦を突破した錦織(写真は2月のダラスOP時)。(C)Getty Images

ツアーの実力者たちが出場しているアリゾナ・チャレンジャーで初戦を突破した錦織(写真は2月のダラスOP時)。(C)Getty Images

 南カリフォルニア州のインディアンウェルズと、フロリダ半島先端のマイアミで開催されるATPマスターズ2大会は、その温暖で陽光に恵まれた気候から“サンシャイン・ダブル”と呼ばれている。

 その2つの大会と都市の間に存在するATPチャレンジャー“アリゾナ・テニス・クラシック”に、今年、錦織圭が初出場した。

 同大会が発足したのは2019年。「BNPパリバ・オープン」(インディアンウェルズ)1週目で敗退し、「マイアミ・オープン」まで滞在地や練習環境に困る選手の救済処置的な意味合いもあり、立ち上がった。

 もっとも錦織の場合は、フロリダ州在住。練習拠点にも困らないが、それでも彼は、チャレンジャー出場を選んだ。

「まだまだ自分の中で、完成していないというか、感覚的に80%まですらまだ来てない。インディアンウェルズはまあまあ良かったですけど、もうちょっと一定のラインまで戻したいので、試合数をこなしたいところです」

 それが、錦織が大会開催地のアリゾナ州フェニックスに向かった理由。気候も人々の気質も陽気なこの街で、他の日本人選手たちとハウジングし「リラックスできている」ことも、参戦要因の一つのようだ。

 ATPチャレンジャーはツアーの下部大会に位置づけられるが、前述した発足の経緯から、このアリゾナ・クラシックのレベルは高い。第1シードは世界36位のヌーノ・ボルジェス(ポルトガル)で、第2シードは40位のフラビオ・コボッリ(イタリア)。さらには錦織に象徴されるように、元トップの実力者や、18歳にしてツアー優勝したばかりのジョアン・フォンセカ(ブラジル/80位)のように、話題の選手たちが顔を揃える。

 錦織が初戦で当たったのは、ルカ・ナルディ(67位)。1年前のインディアンウェルズで、ノバク・ジョコビッチ(セルビア/7位)を破り、名を上げたイタリアの若手である。なお錦織とナルディは、昨年11月のATPチャレンジャー「HPPオープン」(フィンランド・ヘルシンキ)決勝で対戦し、その時は錦織が逆転勝利で優勝を手にした。
 
 2度目の対戦でも、序盤でリードしたのはナルディだ。ブレーク先行しゲームカウント4-3としたナルディが、ゲームポイントでも主導権を握っていた。だがこの局面で、コートを端から端まで走りきった錦織が、目の覚めるようなフォアのパッシングショットを叩き込む。そしてこの起死回生の一撃が、流れを変えた。怯えたように球威の落ちた相手のボールを鋭く叩き、錦織が3ゲーム連取で第1セットを逆転奪取。

 第2セットもブレーク合戦となるが、高いポジションのリターンとボレーに活路を見いだした錦織が、終盤の3ゲーム連取で突き放す。終わってみれば、6-4、6-3で勝利を手にした。

 スコア的には、快勝とも言える数字。ただ、試合後の錦織の口をつくのは、反省の弁だった。

「まだなんか、全然駄目ですね。うーん……、もうちょっとクリックするのを待つというか、ひらめきというか感覚待ちですね」

「良い時の時間帯が短かったし、こんなにブレークされること自体が、まず良くないし」
 
 本人の言葉通り、ミスが続く局面が幾度かあったのは確か。同時に、半年前より楽なスコアで勝ってなお首をかしげる姿は、心身の状態と視線の向上を映してもいるだろう。

 試合後のコートインタビューで「今大会の目標」を問われた錦織は、「まずはトップ50だが、特に具体的なゴールは設定していない」と言った。彼がアリゾナで求めているのは、彼の中で「何かがクリック」する瞬間。種々の要素がカチリと噛み合う、その音だろう。

現地取材・文●内田暁

【動画】「アリゾナ・クラシック」1回戦、ナルディと対戦した錦織のピックアッププレーと入場シーン

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