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海外テニス

日頃は勝っても控えめなメドベージェフが珍しく喜びを爆発させる“激レアシーン”の生まれた理由<SMASH>

中村光佑

2025.03.16

勝利目前の状態からの逆転負けを喫する試合が続いていたメドベージェフが「BNPパリバ・オープン」の準々決勝で珍しく喜びを爆発させた。(C)Getty Images

勝利目前の状態からの逆転負けを喫する試合が続いていたメドベージェフが「BNPパリバ・オープン」の準々決勝で珍しく喜びを爆発させた。(C)Getty Images

 いよいよ大詰めを迎えている男子テニスツアーのマスターズ1000シリーズ「BNPパリバ・オープン」(3月5日~16日/アメリカ・インディアンウェルズ/ハードコート)での“激レアシーン”が話題を呼んでいる。

 現地13日に行なわれたダニール・メドベージェフ(ロシア/世界ランキング6位)とアルトゥール・フィス(フランス/同21位)によるシングルス準々決勝でのこと。この試合はメドベージェフが6-4で第1セットを先取するも、第2セットは2-6で落としてセットオールとなった。

 ファイナルセットは両者2度ずつブレークを奪い、勝負の行方はタイブレークへと委ねられた。ここでも激しい攻防が繰り広げられたが、最後はメドベージェフが勝負強さを発揮して7-6(7)とし、ベスト4進出を果たした。

 3本目のマッチポイントを取り切った直後にメドベージェフは両手を上げて飛び跳ねながら嬉しさを爆発させたのだが、これは非常に珍しい光景である。というのも彼は喜びの感情をほとんど表現しないことで知られているからだ。

 2020年11月のシーズン最終戦「Nitto ATPファイナルズ」を制した時は淡々とした様子を見せ、2021年の全米オープンで四大大会初優勝を果たした時もプレイステーションのサッカーゲーム「FIFA」で選手がゴールを決めた際に地面に倒れる“デッドフィッシュ(死んだ魚)”を披露したメドベージェフ。だからこそ、今回彼が見せた強烈なセレブレーション(勝利を祝うパフォーマンス)は“激レア”と言っても過言ではないのだ。

 だがそこにはメドベージェフの苦悩が如実に表れたようにも見えた。
 
 昨季は7年ぶりに無冠に終わり、今シーズンも1月の四大大会「全豪オープン」2回戦で予選勝者の19歳ラーナー・ティエン(アメリカ/現68位)に敗退。2月の「ドバイ選手権」(ATP500)では準々決勝でタロン・フリークスポール(オランダ/現43位)に4本のマッチポイントを握ったところから大逆転負けを許すなど、苦しい戦いが続いている。

 珍しく喜びをあらわにしたのは自身の置かれている現状を踏まえてのものでもあったという。フィス戦を終えた後の会見でメドベージェフは話題の“激レアシーン”についてこう言及した。

「今年は接戦を3試合落としていた。ティエン戦とフリークスポール戦では、本当に勝利まであと一歩だった。そういう試合を続けて落とすと、大事な場面での自信も失ってしまう。2018年には、タイブレークで20連勝くらいしていたことがあった。自分ではその記録を意識していなかったが、結局のところは自信の問題だ」

「ある時は自信を持っていても、ある時には失ってしまうこともある。もしこの試合に負けていたら、相当落ち込んでいたと思う。もし自分がマッチポイントでウィナーを決めていたら、ここまで感情を爆発させることはなかったのかも。自分でも驚いたよ。勝利の瞬間にアドレナリンが一気に高まり、それを抑えきれなかった」

 インディアンウェルズ初優勝も視界に捉えていたメドベージェフ。だが喜びも束の間、現地15日に実施された準決勝では21歳のホルガー・ルネ(デンマーク/13位)に5-7、4-6で敗れて決勝進出はならず。23年5月のイタリア国際(ATP1000)以来のツアー優勝は、またもお預けとなった。

文●中村光佑

【動画】メドベージェフが大喜びしたとフィスとの「BNPパリバ・オープン」準決勝ハイライト

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