このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。
第38回の解説は、元デ杯代表で引退後は男女ナショナルチームのコーチを歴任、現在は盛田正明テニスファンドのスタッフを務める丸山薫氏。彼がぜひ見てほしいと勧めるのは、昨年グランドスラムで2勝を挙げた若獅子アルカラスだ。
丸山氏はアルカラスの持つ能力を「異常」とまで評して絶賛する。その理由は「フィジカル能力」と「戦術」の両方を完璧に備えているからだそうだ。まずフィジカル能力についてこう語る。
「フィジカルの3大要素は『身体スピード』『スタミナ』『パワー』です。アルカラスは身体スピードが非常に速く、スタミナも無尽蔵にある。現代の試合は速いスピードで長時間戦い続ける必要があり、彼はグランドスラムで4時間マッチになっても全く落ちません。しかもパワーも常に全開です」
他のトッププロを見ても、3つ揃っている選手はまずいないという。「シナーはスピードはあるけどパワーとスタミナで少し劣る。ジョコビッチはパワーが落ちる」と丸山氏。現在のツアーでは3大要素を最も満たしているのがアルカラスだという見方だ。
そしてもう1つの優れた要素が「戦術」である。「アルカラスは戦術も豊富で、今までのクレーコーターよりもバリエーションがあります」と丸山氏は語る。
「ラリーだけでなく、サーブ&ボレーもすればリターンダッシュもする。プラスアルファがあって攻守のバランスが取れている」とのこと。「色んなプレーができるからこそ、芝、ハード、クレーと、全サーフェスのグランドスラムを取れたわけです」と説明してくれた。
丸山氏は、このアルカラスの多彩な戦術を実感するには、サービスリターンに着目することを勧める。
「バックポジションから重いボールを打ったり、レギュラーポジションから強打したり、フロントポジションからライジングで叩いたりと、彼はリターンでどれでもできるんです。大抵の選手はどちらかに偏りますが、本当にスゴイですね」
3種のリターンはサーフェスによっても使い分けるという。次に観戦する時はそれにも注目するといい。
◆Carlos Alcaraz/カルロス・アルカラス(スペイン)
2003年5月5日生まれ。183cm、74kg、右利き、両手BH。15歳でプロとなり、21年に18歳でツアー優勝。22年に全米OPを制し、史上最年少の19歳で世界1位の座に就いた。24年は全仏OPとウインブルドンで優勝。強烈なストロークを軸に攻守自在のプレーをする。コーチは元1位のJ・C・フェレーロ。
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
【連続写真】アルカラスの攻撃的リターンからのネットダッシュ『30コマの超分解写真』
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丸山氏はアルカラスの持つ能力を「異常」とまで評して絶賛する。その理由は「フィジカル能力」と「戦術」の両方を完璧に備えているからだそうだ。まずフィジカル能力についてこう語る。
「フィジカルの3大要素は『身体スピード』『スタミナ』『パワー』です。アルカラスは身体スピードが非常に速く、スタミナも無尽蔵にある。現代の試合は速いスピードで長時間戦い続ける必要があり、彼はグランドスラムで4時間マッチになっても全く落ちません。しかもパワーも常に全開です」
他のトッププロを見ても、3つ揃っている選手はまずいないという。「シナーはスピードはあるけどパワーとスタミナで少し劣る。ジョコビッチはパワーが落ちる」と丸山氏。現在のツアーでは3大要素を最も満たしているのがアルカラスだという見方だ。
そしてもう1つの優れた要素が「戦術」である。「アルカラスは戦術も豊富で、今までのクレーコーターよりもバリエーションがあります」と丸山氏は語る。
「ラリーだけでなく、サーブ&ボレーもすればリターンダッシュもする。プラスアルファがあって攻守のバランスが取れている」とのこと。「色んなプレーができるからこそ、芝、ハード、クレーと、全サーフェスのグランドスラムを取れたわけです」と説明してくれた。
丸山氏は、このアルカラスの多彩な戦術を実感するには、サービスリターンに着目することを勧める。
「バックポジションから重いボールを打ったり、レギュラーポジションから強打したり、フロントポジションからライジングで叩いたりと、彼はリターンでどれでもできるんです。大抵の選手はどちらかに偏りますが、本当にスゴイですね」
3種のリターンはサーフェスによっても使い分けるという。次に観戦する時はそれにも注目するといい。
◆Carlos Alcaraz/カルロス・アルカラス(スペイン)
2003年5月5日生まれ。183cm、74kg、右利き、両手BH。15歳でプロとなり、21年に18歳でツアー優勝。22年に全米OPを制し、史上最年少の19歳で世界1位の座に就いた。24年は全仏OPとウインブルドンで優勝。強烈なストロークを軸に攻守自在のプレーをする。コーチは元1位のJ・C・フェレーロ。
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