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海外テニス

【プロの観戦眼37】意図した所に相手に打たせてカウンター。ジョコビッチの展開力に注目!~本村浩二<SMASH>

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2025.02.26

クロスに振られ、走りながら返球したジョコビッチ。より角度をつけてクロスにカウンターを叩き込んでいる。この形を意図的に作れるのが彼の強みだ。左下は本村浩二プロ。写真:真野博正、本誌写真部

クロスに振られ、走りながら返球したジョコビッチ。より角度をつけてクロスにカウンターを叩き込んでいる。この形を意図的に作れるのが彼の強みだ。左下は本村浩二プロ。写真:真野博正、本誌写真部

 このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。

 第37回の解説は、現役時代スペインを拠点に活動し、引退後はコーチとして豊富な経験を持つ本村浩二プロ。彼が推すのは、ナダルが引退して“ビッグ4”でただ1人奮闘を続けるジョコビッチである。

 昨年はパリ五輪決勝でアルカラスを破り、悲願の金メダルを獲得。「37歳であのパフォーマンスを出せるのは驚異的。若手の強力なショットに対して、自分の得意な分野に持ち込むうまさがあります」と本村氏は解説する。

 どういうことか?「いくらジョコビッチでも、勢いのある若手にパワーで対抗するのは厳しい。だからショットに角度をつけたり、回転を混ぜたりして、展開力によってオープンスペースを作り出すんです」。そうしてこじ開けた穴に決定打を打ち込むのが、現在のジョコビッチのスタイルだという。

 それを実践するには「自分が打ったショットに対してどんなボールが返ってくるか、予測しておくことが必要」と本村氏。そうでないとこちらが先にボールを展開し、ラリーを支配することはできない。
 
「ジョコビッチは長年の経験から正確に予測できるし、その強みを自分でわかっています。予測がいいからこそ、力で押せなくても展開で相手を崩したり、タイミングをずらすボールが打てるんです」。それが“自分の得意な分野”ということだ。

 予測に加えてもう1つ「そこに打たせる能力」も鍵になっているという。例えば相手をフォアに振り、クロスに返球させる。それを待っておいて、もっと鋭角にクロスへのカウンターを決めるといったパターンだ。

「相手が気持ち良く打ったのを、待ってましたとばかりに逆にエースを奪う。それがジョコビッチの得意技で、選手の間でも嫌がられています」

 ジョコビッチの試合を見る時は、そのカウンターに注目してほしいと本村氏は勧める。決して偶発的なエースではなく、その前からビジョンを描いていたことに気付くはずだ。

◆Novak Djokovic/ノバク・ジョコビッチ(セルビア)
1987年5月22日生まれ。188cm、77kg、右利き、両手BH。2003年にプロデビューし、今もツアーのトップに君臨する鉄人。四大大会24勝、世界ランク1位通算在位428週、年間1位8度はいずれも歴代最多記録。昨年はパリ五輪を制し、キャリアゴールデンスラムを達成した。ツアー通算99勝。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【連続写真】クロスに来たボールを鋭角に切り返したジョコビッチのカウンター『30コマの超分解写真』

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