このシリーズでは、多くのテニスの試合を見ているプロや解説者に、「この選手のここがすごい」という着眼点を教えてもらう。試合観戦をより楽しむためのヒントにしてほしい。第39回は、元デビスカップ日本代表の石井弥起氏に話を聞いた。
WOWOWテニス中継の解説者、そして早稲田大学庭球部監督として、年間に数え切れないほど試合を見ている石井氏。その彼が昨年見た中でとりわけ感動したというのが、20歳の新星アルテュール・フィスがユーゴ・アンベールを破ったジャパンオープン決勝である。
「伸び盛りのフィスの勢いが感じられた試合でした。何といっても彼はフィジカルが強い! 特にバックハンド側に振られた時の“球際の強さ”はエグかったですね」
アンベールは左利きなので、アドサイドからワイドにスライスサービスを打つと大きく外に切れていく。
「フィスはコートの外に追い出されても、そこからいいリターンを叩き返せるんです。さらに、アンベールが3球目をオープンコートに振ってきても、しっかり戻って対応する。これを何回も繰り返すわけです。選手目線で言うと『またか』と思って、すごーく嫌なものですよ」
リターンだけではない。通常のラリーでも、フィスはバックに振られた時の返球がうまく、「スピンの精度が高い」と石井氏は評価する。その理由を尋ねると、こう説明してくれた。
「フィスはお尻がどっしりとしていて、軸がブレないんです。あの重心の低さは、しっかりトレーニングしている証拠です。返球と、その後のリカバリーの速さ...いずれも優れた身体バランスがその根底にあります」
現代の男子テニスは、年々目に見えてスピード化が進んでいる。それはショットが高速になると同時に、それを受けるディフェンスもより素早さが求められているということだ。
「今の男子テニスのスピードの中でも、フィスは特に目立っています。それはジョコビッチやナダルに匹敵するフットワークだと思います」と石井氏。
次にフィスの試合を見る時は、ボールのみならずぜひ“動き”に注目してほしい。
◆Arthur Fils/アルテュール・フィス(フランス)
2004年6月12日生まれ。185cm、83kg、右利き、両手BH。21年にプロ転向し、23年リヨンオープンで18歳にしてツアー初優勝を飾る。破壊力のあるサービスとストローク、躍動的な動きを武器に、昨年はジャパンオープンを含む2大会を制覇。トップ20の壁を破り、現在自己最高14位まで上げている。
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
【連続写真】バックに激しく振られた際のフィスのディフェンス『30コマの超分解写真』
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アンベールは左利きなので、アドサイドからワイドにスライスサービスを打つと大きく外に切れていく。
「フィスはコートの外に追い出されても、そこからいいリターンを叩き返せるんです。さらに、アンベールが3球目をオープンコートに振ってきても、しっかり戻って対応する。これを何回も繰り返すわけです。選手目線で言うと『またか』と思って、すごーく嫌なものですよ」
リターンだけではない。通常のラリーでも、フィスはバックに振られた時の返球がうまく、「スピンの精度が高い」と石井氏は評価する。その理由を尋ねると、こう説明してくれた。
「フィスはお尻がどっしりとしていて、軸がブレないんです。あの重心の低さは、しっかりトレーニングしている証拠です。返球と、その後のリカバリーの速さ...いずれも優れた身体バランスがその根底にあります」
現代の男子テニスは、年々目に見えてスピード化が進んでいる。それはショットが高速になると同時に、それを受けるディフェンスもより素早さが求められているということだ。
「今の男子テニスのスピードの中でも、フィスは特に目立っています。それはジョコビッチやナダルに匹敵するフットワークだと思います」と石井氏。
次にフィスの試合を見る時は、ボールのみならずぜひ“動き”に注目してほしい。
◆Arthur Fils/アルテュール・フィス(フランス)
2004年6月12日生まれ。185cm、83kg、右利き、両手BH。21年にプロ転向し、23年リヨンオープンで18歳にしてツアー初優勝を飾る。破壊力のあるサービスとストローク、躍動的な動きを武器に、昨年はジャパンオープンを含む2大会を制覇。トップ20の壁を破り、現在自己最高14位まで上げている。
取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)
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