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海外テニス

「とても大切な年です」国枝慎吾、円熟の技と経験で作り上げた”新しいスタイル”で10度目の全豪戴冠

内田暁

2020.02.03

力強いスマッシュでマッチポイントを決め、渾身のガッツポーズを見せた国枝慎吾。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

力強いスマッシュでマッチポイントを決め、渾身のガッツポーズを見せた国枝慎吾。写真:山崎賢人(THE DIGEST写真部)

 豪快にスマッシュを叩き込むと同時に、両手を突き上げ、天を仰ぎ見た。
ラケットがこぼれ落ちた右手でこぶしを固めると、噛みしめるように胸の前にかざす。

 全豪オープンテニス、10度目の栄冠――。それはグランドスラムでは、実に6大会ぶりに味わう頂点の味だった。

「2020年は、日本に、そして僕にとっても、とても大切な年です」
ウイナースピーチで国枝は、このタイトルが持つ意味の重要性を、その一言に込めた。「大切な年」が意味するところはもちろん、8月に開催される東京オリンピック・パラリンピックにある。

「楽しみというだけでは済まない。自国でのプレッシャーを感じるかもしれない……」
それほどの覚悟を抱いて望む、彼のキャリアの一つの集大成となりえる大会だ。

 今から6年半前――。国枝は東京オリンピック・パラリンピック開催決定の報を、全米オープンの最中に知った。その瞬間、思わず叫ぶほどに興奮したという彼は、翌日のシングルス決勝でステファン・ウデに破れ、「ちょっとエキサイトするのが早すぎちゃいましたね」と、照れた苦笑いをこぼした。
 
「そこまでできるかわからないけれど、目標ができました」

 当時29歳の彼は、確実に刻まれる時間と、台頭する新世代の波を肌身で感じながらも、7年後に視線を向けていた。なおその年に、左腕の強打を引っさげグランドスラムデビューを果たしたのが、当時21歳のゴードン・リードである。

 その後、経験を積み国枝のライバルに名乗りをあげたリードは、2016年に2度のグランドスラムタイトルを獲得し、リオ・パラリンピックの金メダルにも輝いた。ただその後、プレッシャーもあったかリードは勝てない時期を過ごし、国枝もまたヒジにメスを入れるなど、決断の日々を迫られる。ラケットを変え、打ち方も試行錯誤を繰り返し、ようやく完全復帰への手応えをつかんだのが、2年前の全豪で頂点に立った時。そしてグランドスラムでは無冠に終わった昨年末、国枝はフォアとバックの改革に取り組んだ。「グリップを変え、もっとフラットでインパクトを強くする打ち方」に変え、攻撃力に磨きをかける。全ては「もっと強くなるため」だった。
 

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