豪快にスマッシュを叩き込むと同時に、両手を突き上げ、天を仰ぎ見た。
ラケットがこぼれ落ちた右手でこぶしを固めると、噛みしめるように胸の前にかざす。
全豪オープンテニス、10度目の栄冠――。それはグランドスラムでは、実に6大会ぶりに味わう頂点の味だった。
「2020年は、日本に、そして僕にとっても、とても大切な年です」
ウイナースピーチで国枝は、このタイトルが持つ意味の重要性を、その一言に込めた。「大切な年」が意味するところはもちろん、8月に開催される東京オリンピック・パラリンピックにある。
「楽しみというだけでは済まない。自国でのプレッシャーを感じるかもしれない……」
それほどの覚悟を抱いて望む、彼のキャリアの一つの集大成となりえる大会だ。
今から6年半前――。国枝は東京オリンピック・パラリンピック開催決定の報を、全米オープンの最中に知った。その瞬間、思わず叫ぶほどに興奮したという彼は、翌日のシングルス決勝でステファン・ウデに破れ、「ちょっとエキサイトするのが早すぎちゃいましたね」と、照れた苦笑いをこぼした。
「そこまでできるかわからないけれど、目標ができました」
当時29歳の彼は、確実に刻まれる時間と、台頭する新世代の波を肌身で感じながらも、7年後に視線を向けていた。なおその年に、左腕の強打を引っさげグランドスラムデビューを果たしたのが、当時21歳のゴードン・リードである。
その後、経験を積み国枝のライバルに名乗りをあげたリードは、2016年に2度のグランドスラムタイトルを獲得し、リオ・パラリンピックの金メダルにも輝いた。ただその後、プレッシャーもあったかリードは勝てない時期を過ごし、国枝もまたヒジにメスを入れるなど、決断の日々を迫られる。ラケットを変え、打ち方も試行錯誤を繰り返し、ようやく完全復帰への手応えをつかんだのが、2年前の全豪で頂点に立った時。そしてグランドスラムでは無冠に終わった昨年末、国枝はフォアとバックの改革に取り組んだ。「グリップを変え、もっとフラットでインパクトを強くする打ち方」に変え、攻撃力に磨きをかける。全ては「もっと強くなるため」だった。
ラケットがこぼれ落ちた右手でこぶしを固めると、噛みしめるように胸の前にかざす。
全豪オープンテニス、10度目の栄冠――。それはグランドスラムでは、実に6大会ぶりに味わう頂点の味だった。
「2020年は、日本に、そして僕にとっても、とても大切な年です」
ウイナースピーチで国枝は、このタイトルが持つ意味の重要性を、その一言に込めた。「大切な年」が意味するところはもちろん、8月に開催される東京オリンピック・パラリンピックにある。
「楽しみというだけでは済まない。自国でのプレッシャーを感じるかもしれない……」
それほどの覚悟を抱いて望む、彼のキャリアの一つの集大成となりえる大会だ。
今から6年半前――。国枝は東京オリンピック・パラリンピック開催決定の報を、全米オープンの最中に知った。その瞬間、思わず叫ぶほどに興奮したという彼は、翌日のシングルス決勝でステファン・ウデに破れ、「ちょっとエキサイトするのが早すぎちゃいましたね」と、照れた苦笑いをこぼした。
「そこまでできるかわからないけれど、目標ができました」
当時29歳の彼は、確実に刻まれる時間と、台頭する新世代の波を肌身で感じながらも、7年後に視線を向けていた。なおその年に、左腕の強打を引っさげグランドスラムデビューを果たしたのが、当時21歳のゴードン・リードである。
その後、経験を積み国枝のライバルに名乗りをあげたリードは、2016年に2度のグランドスラムタイトルを獲得し、リオ・パラリンピックの金メダルにも輝いた。ただその後、プレッシャーもあったかリードは勝てない時期を過ごし、国枝もまたヒジにメスを入れるなど、決断の日々を迫られる。ラケットを変え、打ち方も試行錯誤を繰り返し、ようやく完全復帰への手応えをつかんだのが、2年前の全豪で頂点に立った時。そしてグランドスラムでは無冠に終わった昨年末、国枝はフォアとバックの改革に取り組んだ。「グリップを変え、もっとフラットでインパクトを強くする打ち方」に変え、攻撃力に磨きをかける。全ては「もっと強くなるため」だった。