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【伊達公子】男女差別や人種差別は根が深い。女子テニスの魅力を上げていくべき<SMASH>

伊達公子

2025.06.13

「試合時間は関係なく、魅力的な試合に対価が払われるべきです」と言う伊達公子さん。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 テニスは女性も活躍できるスポーツです。ビリー・ジーン・キングさんを筆頭に、数多くの選手たちが女性選手の地位向上に尽力してくれたおかげでしょう。そして今は、男女平等について色々と議論されています。

 現役時代、女性だからと差別を感じたことがあるかと問われると、その点についてはあまり気になりませんでした。ファーストキャリアの時は、男女平等以前に、人種的な差別の方に気を取られていました。

 直接的に何か自分自身に降りかかったわけではありません。しかし、試合後の握手をした後に、ロッカールームに戻ってすぐに目の前で手を洗われたという話を聞いたことを覚えています。

 ルール改正もアジア人選手の台頭を抑え込む意図を感じました。他のスポーツでもアジア人が活躍し始めたら、ルール改正が行なわれることがあるように、白人が始めたスポーツの場合は、この問題はなかなか払拭できないものだと感じます。

 セカンドキャリアの時は、90年代とは大きく変わり、中国をはじめトップ100の中にいるアジア人の人数も増え、時代と共に大きな壁はなくなったと感じていました。ただ、人種の問題同様に、男女差別も完全に払拭するのは本当に難しいと感じます。でも、アクションを起こすことは意味があるでしょう。
 
 アクションを起こす方向性ですが、男女平等より女子テニスの地位向上を目指すべきだと考えています。男女一緒にシングルスを戦うことはできません。男子シングルスと女子シングルスが分かれている以上、違うものなのです。

 わかりやすい部分で言えば、グランドスラムは男子が5セットで女子は3セットです。女子は1時間で試合が終わる場合がありますし、男子は5時間かかる場合もあります。

 これほど試合時間に差があると大会へ向けた練習、トレーニングの取り組み方、試合前の心構えから違ってきます。ラケット、ドリンク、ウェアなどを準備する数も男性の方が多いのは当然です。男女の試合はそもそも違うものなので、平等にしようとするのは無理があります。それよりも、誰がどういう試合を見に行きたいと思うのかでしょう。

 性別や試合時間は関係なく、見る側が見たいと思った魅力的な試合に対価が払われるべきです。それが女子の試合ならば、賞金は男子よりも女子の方が高くなっていいのです。簡単ではありませんが、女子テニスは女子テニスならではの魅力を作り上げていくことが求められているのだと思います。

文●伊達公子
撮影協力/株式会社SIXINCH.ジャパン

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