間もなく開幕するテニス四大大会「ウインブルドン」(6月30日~7月13日/イギリス・ロンドン/芝コート)。1877年の初開催から148年を迎える今年、テニスの聖地に大きな変革がもたらされる。全てのコートで線審を廃止し、電子判定が全面的に導入されるのだ。
ちなみに四大大会ではすでに全豪オープンと全米オープンで電子判定が採用されており、男子のATPツアーでも今シーズンから全面的に同技術が導入されている。
一方、長らく大会独自の伝統と歴史を重んじてきたウインブルドンは2007年から判定への異議申し立てができる「チャレンジ」を採り入れているものの、線審の廃止には消極的な姿勢を見せてきた。それを考えると同大会での電子判定全面導入はテニス界における1つの大改革と言えるだろう。
電子判定は本戦だけではなく、すでに終了した予選でも採用。主にこれまで線審が担ってきたショットの「イン・アウト」とサービスの「フォールト」のコールをカバーするという。以前ウインブルドンの最高経営責任者を務めるサリー・ボルトン氏はテクノロジー導入に舵を切った経緯をこう説明していた。
「電子判定採用の決定は、多くの検討プロセスと協議を経て下されました。2024年のウインブルドンで実施したテストの結果を検討し、電子判定が十分に堅牢であると判断しました。判定の精度を最大限に高めるための重要なステップを踏むには最適な時期だと考えています。選手たちにとっては、他のツアーの大会でプレーする時と同じ条件が提供されることになります」
電子判定導入に対する選手の反応はどうなのだろうか。海外メディア『tennishead』によれば、男子世界ランキング7位のロレンツォ・ムゼッティ(イタリア/23歳)がウインブルドンのメディアデーで次のように自身の考えを示したという。
「(線審廃止は)ちょっと奇妙に思えるかも。ウインブルドンは伝統を重んじてきた大会だからね。常にこの大会には独自の線審がいたわけだし、その線審たちが醸し出していたエレガントな雰囲気は、本当に伝統的で歴史も感じられるものだった」
「ただもちろん、時代は常に進化を求めているわけだし、選手の立場から言わせてもらうと、電子判定を取り入れることで(試合中の)抗議などは減ると思う。近年は選手が打つボールが本当に速いし、(目視で)判定するのは非常に難しいだろう。だから現代のテニスは、テクノロジーの助けがより必要になる。特に球足が速い芝コートとなると、この変更は正しい判断だったと思う」
線審なきウインブルドンに違和感を覚える人は少なくないだろうが、伝統と革新のせめぎ合いのなかで進化を遂げるテニスの聖地に、今後どんな歴史が刻まれていくのか楽しみだ。
文●中村光佑
【画像】ムゼッティをはじめ、2025全仏オープンで躍動した男子トップ選手たちの厳選フォト
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【関連記事】蹴ったボールが線審に直撃! それでも失格にならず物議のムゼッティ「不運な偶然の出来事だった」と弁解<SMASH>
ちなみに四大大会ではすでに全豪オープンと全米オープンで電子判定が採用されており、男子のATPツアーでも今シーズンから全面的に同技術が導入されている。
一方、長らく大会独自の伝統と歴史を重んじてきたウインブルドンは2007年から判定への異議申し立てができる「チャレンジ」を採り入れているものの、線審の廃止には消極的な姿勢を見せてきた。それを考えると同大会での電子判定全面導入はテニス界における1つの大改革と言えるだろう。
電子判定は本戦だけではなく、すでに終了した予選でも採用。主にこれまで線審が担ってきたショットの「イン・アウト」とサービスの「フォールト」のコールをカバーするという。以前ウインブルドンの最高経営責任者を務めるサリー・ボルトン氏はテクノロジー導入に舵を切った経緯をこう説明していた。
「電子判定採用の決定は、多くの検討プロセスと協議を経て下されました。2024年のウインブルドンで実施したテストの結果を検討し、電子判定が十分に堅牢であると判断しました。判定の精度を最大限に高めるための重要なステップを踏むには最適な時期だと考えています。選手たちにとっては、他のツアーの大会でプレーする時と同じ条件が提供されることになります」
電子判定導入に対する選手の反応はどうなのだろうか。海外メディア『tennishead』によれば、男子世界ランキング7位のロレンツォ・ムゼッティ(イタリア/23歳)がウインブルドンのメディアデーで次のように自身の考えを示したという。
「(線審廃止は)ちょっと奇妙に思えるかも。ウインブルドンは伝統を重んじてきた大会だからね。常にこの大会には独自の線審がいたわけだし、その線審たちが醸し出していたエレガントな雰囲気は、本当に伝統的で歴史も感じられるものだった」
「ただもちろん、時代は常に進化を求めているわけだし、選手の立場から言わせてもらうと、電子判定を取り入れることで(試合中の)抗議などは減ると思う。近年は選手が打つボールが本当に速いし、(目視で)判定するのは非常に難しいだろう。だから現代のテニスは、テクノロジーの助けがより必要になる。特に球足が速い芝コートとなると、この変更は正しい判断だったと思う」
線審なきウインブルドンに違和感を覚える人は少なくないだろうが、伝統と革新のせめぎ合いのなかで進化を遂げるテニスの聖地に、今後どんな歴史が刻まれていくのか楽しみだ。
文●中村光佑
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