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海外テニス

東レPPOで念願の初優勝を遂げたベンチッチ。「私のプロキャリアのスタート地点だった」という日本への深い思い<SMASH>

内田暁

2025.10.27

激戦を乗り越えてきたベンチッチ(左)は体力的に余裕のあるノスコワ(右)に対し、いつも以上に攻撃的な戦術を用いて6-2、6-3と快勝した。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

激戦を乗り越えてきたベンチッチ(左)は体力的に余裕のあるノスコワ(右)に対し、いつも以上に攻撃的な戦術を用いて6-2、6-3と快勝した。写真:金子拓弥(THE DIGEST写真部)

 それらケガや出産もあり、ベンチッチが有明コロシアムを訪れたのは、4年前のオリンピック以来だった。その良い思い出をなぞるように、今大会の彼女はあの時と同じく、フルセットの大熱戦を制していく。準々決勝のカロリーナ・ムチョバ戦では、窮地を幾度も切り抜けて、3時間8分の死闘の末に勝利。準決勝のソフィア・ケニン戦も、2時間超えの熱戦だ。

 一方でドローの反対側を勝ち上がってきたリンダ・ノスコワは、対照的な足跡を辿っていた。準々決勝は相手の途中棄権。準決勝は、エレーナ・ルバキナが戦前に棄権したため試合はなし。決勝を迎えた時点で、両者がコート上で費やした時間には、4時間以上の開きがあった。

 この差は、どちらにも優位に働いた可能性はあるだろう。ベンチッチは体力的には不利だが、ノスコワには試合勘欠如の懸念もある。

 そして「試合前には、必ずプランを用意する」というベンチッチには、状況を踏まえた上での、明確な戦略があった。

「体力的に厳しいことはわかっていた。だから、いつも以上に攻撃的に行くことを心掛けた」
 
 果たしてベンチッチは、早いタイミングで左右に打ち分け、前に踏み込み、浮いたボールはスイングボレーを叩き込んだ。ポイントを短く終えるためのその策は、ミスのリスクと表裏のもろ刃の剣。それでも迷いなく攻める姿勢、そして確かな技術が、多くの局面で彼女にポイントをもたらす。

 相手に10本あったブレークポイントも、全て凌ぐ勝負強さを発揮。「今日、サービスが良かったのはラッキーだった」と言うが、それもこのコートで重ねてきた時間と経験の産物でもあるだろう。

 試合開始から、1時間21分――。リターンからの3球目で決めたラストポイントは、この日の試合を、そしてこの大会でのベンチッチを象徴するウイナーだった。
 
 東レ パンパシフィックオープンを象徴する漆器の優勝プレートは、ベンチッチにとってキャリア通算10度目のツアータイトルでもある。

 同大会は今年、40周年を迎えた。決勝開始前のウォームアップ時、コート内のモニターに次々と映し出される歴代チャンピオンの姿を見ながら、ベンチッチは「このメンバーに加われたら、最高の気分だろうな」と思っていたという。それら栄光の顔ぶれの中には、ベンチッチの師とも言える、マルチナ・ヒンギスの顔もあった。

取材・文●内田暁

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