専門5誌オリジナル情報満載のスポーツ総合サイト

  • サッカーダイジェスト
  • WORLD SOCCER DIGEST
  • スマッシュ
  • DUNK SHOT
  • Slugger
海外テニス

美しく、強く、プロであり続けた不撓不屈のアスリート。マリア・シャラポワが女子テニス界に残したレガシー

内田暁

2020.02.28

2004年のウインブルドンで17歳にして優勝を飾ったシャラポワ。まだあどけなさが残る。(C)GettyImages

2004年のウインブルドンで17歳にして優勝を飾ったシャラポワ。まだあどけなさが残る。(C)GettyImages

 18年に及ぶプロキャリアで、彼女が女子テニス界に残した功績は計り知れない。その最大のレガシーの一つに、コート内外で示したプロフェッショナリズムと、アスリートとしての本能がある。

 大坂なおみは、憧れのセレナ・ウィリアムズと並び、シャラポワこそが「精神的な強さ、戦う姿勢のお手本とし目指した選手」だと言った。先の全豪オープンを制したソフィア・ケニンも、シャラポワが17歳でウインブルドンを制した時、「私も彼女のようになりたい!」と自身の未来を思い描いた。

 そのような少女たちは、世界の至るところに溢れている。シャラポワ引退発表の直後に、カタール・オープン3回戦でキキ・バーテンスを死闘の末に破ったジェン・サイサイも、その一人。

「子供の頃、常に彼女に憧れて私は育った。私たちの世代は、みんなそうだと思う。彼女の戦う姿勢を見て、そこから絶対に諦めないことなど多くを学んだ。たとえ(ゲームカウント)1-5とリードされていても関係ない。どんなスコアでも、最後まで集中力を切らさず戦う彼女のメンタリティは、私たちに、テニス選手のあるべき姿を教えてくれた」

 トップ10選手相手に、最終セットでリードされながらも逆転で金星をつかんだジェンの姿は、正にシャラポワから学んだメンタリティの体現だった。
 
 ベリンダ・ベンチッチも、シャラポワのウインブルドン初優勝をテレビで見て、衝撃を受けたという。そのアイドルの引退を、彼女は、ある種の責任感と共に受け止めていた。

「ずっと見て育ってきた選手が引退していくことは、世代交代の始まりだと感じている。悲しいけれど、必然でもあるものね……」

 その言葉の背後にあるのは、自分たちの世代がトーチを受け取るという決意だろう。
 
 ベンチッチと似た言葉を口にしたのは、先の全豪オープン準優勝で復調を印象づけた、2度のグランドスラム女王のガビルネ・ムグルサである。

「彼女はテニス界の大スターであり、多くを成し遂げてきた。人生の新たなステップを踏み出し、新たな進路を取るのは当然。それは、素晴らしいことよ」

 過剰な感傷をまとわず、自らの進むべき道を見つめるその毅然とした姿勢もまた、シャラポワが後進に示したものだ。

 グランドスラムの男女賞金同額や、多くのスポンサーがつく現在の女子テニス界は、シャラポワ無くしてはありえなかった光景かもしれない。

 コートに残る者たちは、それぞれが異なる立場でその事実を受け止め、新たな景色を描いていく。

文●内田暁

【PHOTO】世界に愛された“ロシアの妖精”マリア・シャラポワの「強く、美しい」厳選フォト
 
NEXT
PAGE

RECOMMENDオススメ情報

MAGAZINE雑誌最新号