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海外テニス

「コーチが席から助言を与えることを許す」。テニスの競技性を変えかねないWTAの新ルール。選手やコーチの考えは?

内田暁

2020.03.17

試合中にベンチにコーチを呼べるオンコートコーチングを活用しているハレップ(右)とケイヒルコーチ(左)。(C)GettyImages

試合中にベンチにコーチを呼べるオンコートコーチングを活用しているハレップ(右)とケイヒルコーチ(左)。(C)GettyImages

 サバレンカ同様に、「コーチングは以前から行なわれたこと」と涼しい顔で言うのは、ベリンダ・ベンチッチ。父親がコーチとして帯同する彼女は、ベンチからのコーチングの方が、オンコートコーチングよりも健全だという。

「私は、コーチがマイクをつけて行なうオンコートコーチングが好きではない。戦術的な会話や重要な助言が、全て筒抜けになってしまうから。すると、試合後に相手選手、さらには次の対戦相手にもそれを聞かれ、分析されてしまうもの」。そのような観点から、その場で指示を得られる今回のルールの導入を、彼女は素直に喜んだ。
  
 他方でコーチングのルール緩和に対し、やや否定的な反応を見せる選手もいる。「これが女子テニスにとって良いことか悪いことかは、まだわからない。でも私は、1セットに一度のオンコートコーチングで十分だと思う」と言うのは、今年30歳を迎えるベテランのペトラ・クビトワだ。

「テニスは基本的にとても個人的な競技。自分で問題を解決しながら戦うべきだと思う」と、ウインブルドン2度の優勝を誇るレフティは、伝統的なテニス観を重視した。

 現世界1位のアシュリー・バーティーも、同様の哲学の持ち主だ。「私はコーチからの指示よりも、自分で問題を見極め、自分の頭で解決策を考え、それをコートで実戦したいと思うタイプ。コーチングは、必要だと思った時だけ頼めば良い」と、女子テニス界きっての戦略家は、新ルール導入は意に介さぬ構えだ。
 
 ではコーチたちは、試合中にも常時助言が与えられることを、どう捕らえているだろうか? 「ベリンダが言った通りだよ。これまでも皆がやっていたことだ。別に今までと変わりがない」と言うのは、ベンチッチの父にしてコーチのイバン氏である。

 あるいは、現ハレップのコーチであり、過去に多くのトッププレーヤーを指導してきたダレン・ケイヒルは、「コーチの役割が拡張していくのは良いこと」と、このルールがテニスという競技を、より面白く、高次に変えていくのではと目している。

「私は伝統を愛する人間だし、年配者だ。テニスとは1対1の勝負で、問題は自分で解決するという伝統を尊重している。だが同時に、テニスはスポーツとして進化するべきだとも思っている」。自身の父親も、オーストラリアン・フットボールの著名な監督であったケイヒルは、「コーチ業を拡大し、コーチが成長していくという意味でも、WTAは良い方向に向かっている」と持論を展開した。
 

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