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海外テニス

全仏オープン延期で開催が危ぶまれる『レーバー・カップ』の比類なき魅力とは【男子テニス】

レネ・シュタウファー

2020.03.25

チームメイトに熱い声援を送るワールド選抜のキリオス(右から2人目)たち。それは公式戦でもなかなか見られない光景だ。(C)GettyImages

チームメイトに熱い声援を送るワールド選抜のキリオス(右から2人目)たち。それは公式戦でもなかなか見られない光景だ。(C)GettyImages

 今年アメリカのボストンで開催される第4回大会に向け、出場契約を更新したビヨン・ボルグとマッケンローは、自らもレーバー・カップのファンだと公言する。「年間で最高の1週間だ」とボルグが語れば、マッケンローも「過去20年間でのベスト企画だ」と同調する。

 成功の秘訣は意外にシンプルだ。まず、選手が受けるプレッシャーの強さ。普段から“自分のため”にプレーする彼らが、ライバル選手と一緒になって「フォア・ザ・チーム」に徹する。自分のミスが仲間に悪影響を与えないため、体験したことのない感情と気持ちを切り替えることになる。しかも自分たちのプレーを見ているのは、少し前まで世界を制していたボルグとマッケンローだ。それだけでも余計に力が入る。

 そしてもう1つは、大会名にもなっているロッド・レーバー氏の存在だ。1960 年から69年にかけて4大大会を11回制し、そのうち2度(1962年と69年)も年間グランドスラムを達成した唯一の選手。81歳にしてなお存在感はとてつもない。

 フェデラーは、いわゆる主催者でもあった。元々この大会は彼の発案により誕生したもので、エージェントの『Team8』と彼のマネジャーを務めるトニー・ゴッドシックにより運営されている。オーストラリアとアメリカの協会の支援を受けていたが、今年からは新たにATPツアーがこの大会をカレンダーに加えた。
 
 気持ちのアップダウンが激しいことで有名なキリオスは、『バッドボーイ』なるあだ名を頂戴しているが、レーバー・カップの最中だけは模範的な選手として行動した。フェデラー相手に熱いプレーで圧倒、欧州選抜を敗戦の瀬戸際まで追い込んだ。

「チームで戦うのって本当に楽しい。友だちが近くにいて、テニスも選手のこともよくわかるキャプテンが見守っている。それに俺たちって(欧州以外の)世界を代表しているんだ。これ以上の価値がある大会はないと思うね。俺にとっては究極の参加動機だよ」。

 スポーツの世界は賞金とポイントだけで価値が決まるわけではない。名誉や野心はもちろんのこと、自分のベストパフォーマンスを示したい、そのための意欲を刺激したいといった部分を含んでいなければ成り立たないものではなかろうか。それらの要素を全て表していたのがフェデラー、ナダル、キリオス、そしてチームプレーヤー全員だったのだ。

文●レネ・シュタウファー
ITWA(国際テニスライターズ連盟)正会員で、経験豊富なスイス人ジャーナリスト。ヨーロッパを中心に第一線で活躍しており、フェデラーやヒンギスとも親交が厚い。2018年に発刊されたフェデラーをテーマにした著書は、スイスでベストセラーとなっている。

構成・翻訳●安藤正純

※『スマッシュ』2019年12月号より再編集・再掲載

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