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国内テニス

「なぜ自分はテニスをやっているんだろう?」目標を見失った元世界70位の尾崎里紗が明かす心の葛藤とは【国内テニス】

内田暁

2020.05.26

全国小学生テニス大会で優勝して以来、ただガムシャラにテニスと向き合ってきた尾崎だったが…。(写真は今年1月に出場した香港でのITF大会)写真:香港テニス協会

全国小学生テニス大会で優勝して以来、ただガムシャラにテニスと向き合ってきた尾崎だったが…。(写真は今年1月に出場した香港でのITF大会)写真:香港テニス協会

 それでも彼女の周囲には、スポンサーをはじめ、助けの手を差し伸べてくれる人々が多く居た。その恩にも報いようとコートに向かうも、「一度切れてしまった気持ちの糸はなかなか戻らず、試合で頑張ろうとするのですが、持ち味の粘り強さが全然発揮できない」という日が続く。

「今度こそ出来ると思って試合に行くけれど、出来なくて自分を信じられなくなって……をずっと繰り返していて。そこからグルグルと抜け出せないまま、この2~3年来てしまった感じです」。

 ではなぜ、うまくいかなくなってしまったのか――?
 
 アスリートなら、誰もが一度は自身に質すであろうその問いに、競技の枠組み内で答えを探せたなら、問題はそこまで複雑化しなかったのかもしれない。だが彼女の場合、自問自答は「なぜ自分はテニスをやっているんだろう? 何が目標なのだろう?」という、極めて内省的な行為へと発展していく。

 果たしてこれは、自分で選んだ道だったのか? コーチや周囲の人々が作ったレールの上を歩んできただけではないのか?

 そのような疑念が湧いた時、「じゃあ友だちと遊ぶのもやめ、大学にも行かず高校も通信制でやってきたのに、今までのことは果たして意味があったのか?」との悲観的な想いが胸を占めた。周囲を見渡してみれば、料理の専門学校に進み調理師を目指す妹や、商社に勤める兄の姿が「自分のやりたいことを自分で見つけて、実現している」と眩しく映る。

 翻って自分はどうかと振り返ると、全国小学生テニス選手権で「訳も分からず優勝し、そこから周囲の注視や期待を感じるようになった」日が起点にあった。その後はジュニアの日本代表等にも選ばれ、テニス関係者や企業の人々との会食にも参席するようになり、大人たちが口にする「プロ」の言葉が頭上を当然のように飛び交うようになる。

 生来の生真面目な性格もあるのだろう、彼女はそのような周囲の期待に、全力で応えようと走ってきた。少女時代からの目標でもある「グランドスラム出場」にも、22歳の時に到達する。だが、その夢すらも実はコーチに植え付けられた虚像だったのではと疑った時、練習に身が入らず、コーチの助言にも素直に従えなくなった。
 
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