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海外テニス

「リスクを取らぬ者に、シャンパンを飲む資格はない」ロシアの格言を遂行したメドベージェフ。2セットダウンからの猛追劇

内田暁

2019.09.09

4時間49分の激闘を戦い抜き、全米優勝を果たしたナダルは、勝利の瞬間、コートで大の字に。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

4時間49分の激闘を戦い抜き、全米優勝を果たしたナダルは、勝利の瞬間、コートで大の字に。写真:山崎賢人(スマッシュ写真部)

 両者の名を連呼するコールが渦巻くなか、始まった第4セットは並走状態が続く。究極のベースライナーと呼ばれたのが嘘のように、サーブ&ボレーを連発するナダル。対するメドベージェフは、早いタイミングで打ち込むバックのダウンザラインが生命線だ。そして、両者サービスキープを続けた第10ゲーム――

 ワイドへサービスを打つと同時に前に出るナダルの横を、バックのリターンが凄まじいスピードで抜いていく。試合開始時に4時を回った時計の針は、この時ちょうど8時を指す。メドベージェフがついにナダルを捕らえ、試合はファイナルセットにもつれこんだ。

 最終セットの第2ゲームは、この試合の1つのターニングポイントとなる。攻撃の手を緩めぬメドベージェフが、手にした2本のブレークポイント。ナダルの名を呼ぶファンのひっ迫した声は、このゲームを落とせば一気に流れが加速することを、誰もが察していたことを示していた。

 もちろんその事実を、誰より熟知していたのがナダルである。そして彼には、経験に根ざした「自分を信じる力」があった。ここでもサーブ&ボレーを連発し、3度のブレークポイントを凌ぐ。すると、第5ゲームから3ゲーム連取して5-2とし、栄冠まで1ゲームへと迫った。
 だが、試合はここから、最後の山場を迎える。決して諦めぬメドベージェフが追い上げ、ゲームカウントは5-4に。ここでもナダルはブレークポイントに瀕するも、フォアの強打でしのぎ、さらにドロップショットを沈めて達した、マッチポイント――。

 この、ナダルが手にした3つ目のマッチポイントは、三度目の正直となる。力なく浮いた相手のリターンの着地点を見るが早いか、ナダルは背中からコートに倒れ込んだ。

 試合時間は、4時間49分。メドベージェフが、準優勝スピーチの心配したあの時点から、2時間34分が経っていた。

取材・文●内田暁
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