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海外テニス

錦織圭を全仏初戦突破に導いた、30歳からの「ちっちゃなマイナーチェンジ」とは?【全仏テニス】

内田暁

2020.09.28

一進一退を繰り返したエバンスとの戦いは実に3時間49分にも及ぶロングマッチとなった。(C)GettyImages

一進一退を繰り返したエバンスとの戦いは実に3時間49分にも及ぶロングマッチとなった。(C)GettyImages

 一方的な展開となったセットを分け合い、さらに第3セット開始早々に雨で短い中断を挟んだ試合は、再開後は仕切り直しと言わんばかりに、両者ともにプレーの質を上げ四つに組み合った。

 第3セットは、終盤に追いつかれるも終始優勢だった錦織が、タイブレークを制して奪う。

 第4セットは、最初のゲームでネットプレーを仕掛けたエバンスが、流れを反転させそのままセットを取り返した。

 かくしてもつれ込んだファイナルセットでも、一進一退の攻防が続く。

 先にブレークしたのは錦織だが、エバンスも粘り強いプレーで追いすがる。試合時間が3時間半に迫った頃、今年から新設された照明塔に火が灯った。

 再び舞い始めた霧雨が電灯を浴びてチラチラと光るなか、ゲームカウント5-4の相手サービスゲームで、錦織が「最後は一番集中できた」と自画自賛の鋭さを発揮する。ネットに出て相手のミスを誘ったのを口火とし、好リターン2連発でマッチポイント。最後は、深く鋭利なフォアで相手の守備を打ち破り、歓喜の叫びと共に、寒空の下で1年1カ月ぶりのグランドスラム勝利をつかみ取った。
 
 フルセットに及び、流れも二転三転したこの試合に、ターニングポイントを見出すのは難しい。ただ、逆転勝利を呼び込んだ鍵の一つに、ネットプレーが挙げられるのは確実だ。

 ネットプレーは錦織が、新コーチに招いたマックス・ミルニーと共に、ツアー中断期に磨きを掛けてきた新たな武器。この日、錦織が試みたネットプレーは実に66回に及び、そのうちポイントにつなげたのは39。1ゲームあたり平均1.5回ほどネットに出ている計算となり、ネットで奪ったポイントは、総獲得ポイント数の3割近くを占めた。

 また、ネットプレーの数と成功率をセット別で見た時にも、失った第1セットと第3セットは回数が少なく、獲得率も5割を切っている。逆に取ったセットは全て、成功率5割超え。本人はまだ「無理に出てミスしたり、タイミングが悪くて抜かれたりと反省点もけっこうある」と省みるが、ツアー再開以降、試合を重ねるごとに成果が出ているのは間違いない。
 
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