30歳を迎えてのプレースタイルの“変化”について問われると、当人は「文字にすると『変える』と言ってますが、大きく変えた訳ではないので。本当にちっちゃなマイナーチェンジ」と、錦織節でサラリといなす。

　ただ、大きな変化を生みつつある「マイナーチェンジ」の源泉に、新コーチからの助言があることは迷わず認めた。

「かなりヒントはもらってますね。今まで意識してこなかったこと……前に出るタイミングだったり、今までなかった考え方の共有もあったので。ボレーの技術も、今まで聞いたことがなかったことを教えてもらえているので、すごく充実した感じでやっています」
  　周囲のファンや関係者は、久々のグランドスラム勝利を喜んだり、あるいは５セットマッチを戦った体力面に心配を募らせもする。ただ、当の錦織の表情や声のトーンは落ち着き払い、言葉通りの静かな充実感を端々に滲ませていた。

　３時間49分に詰め込まれた種々の要素は、きっと全てが今の錦織には必要なものだったのだろう――。

　最終的にはそのように感じる、秋の全仏オープン初戦だった。
　
取材・文●内田暁

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