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海外テニス

GS女王2人を破って前哨戦4強入りした日比野菜緒。『新たな武器』を手に全仏に臨む【海外テニス】

内田暁

2020.09.29

全仏オープン本戦には過去2度出場し、まだ勝ち星がない日比野。気を引き締めて初戦に挑む(写真は2017年)。(C)Getty Images

全仏オープン本戦には過去2度出場し、まだ勝ち星がない日比野。気を引き締めて初戦に挑む(写真は2017年)。(C)Getty Images

 もともと日比野は、スピンをかけたショットを深く打ち、相手を後方に押し下げる技には長ける。さらにそこから「ミドルクロス」につなげることで、相手のタイミングや体勢を崩し、場合によってはそのままウイナーを奪い、拾われても作ったオープンコートを用いて打ち合いを有利に運ぶことができるようになった。

 単に前のスペースを使うことでは、ショートアングルの方が効果は高いかもしれない。ただアングルショットを打つにはどうしても、ボールを落とし、打つまで時間をかけなくてはいけない。

 対してミドルクロスは、深いクロスと同様に早いタイミングでボールを叩ける。つまりは、相手にコースを読ませぬ効果は一層高かった。

 その新たな武器を用いて、スティーブンスをフルセットで下した日比野は、2回戦ではザリナ・ディアス、さらに準々決勝では3年前の全仏オープン優勝者のエレナ・オスタペンコまでをも退ける。2回戦と準々決勝は、いずれも強打自慢の相手のボールに食らいつき、球種巧みにコートを広く用いた末の、赤土で勝つべくして勝った2試合だった。

 その意味では準決勝のエレナ・リバキナ戦は、それまでと異なる戦略性が必要とされた試合だったかもしれない。

「長身ということもあり強打してくるタイプかと思ったら、思った以上に緩いボールも使って丁寧に組み立ててきた」という相手に、日比野はややペースを乱された。また、肩口より高く弾む相手のサービスを、最後まで攻略しきれなかったのも敗戦の要因だったという。
 
 2人のグランドスラム優勝経験者を破ってのベスト4は、周囲の目には十分に「いい大会」のようにも映る。だが本人は「もっと良い結果を期待していた自分がいるので、悔しい」と満足の気配はない。同時に、苦手意識を抱いていたクレーでの躍進に「びっくり」とも言うが、この半年間の取り組みを振り返れば、それは必然でもあっただろう。

 これまでは「全仏では自分に期待していない」と言っていた日比野だが、今回の結果を受け、期待値が上がるのは如何ともし難い。変なプレッシャーは感じたくないと思いつつも、「ここでの結果を忘れるというのも無理なので」と現状を受け止め、その上で「トップ選手に勝っても、300位の選手に負けることもあるのがこの世界」と気持ちを引き締める。

「前哨戦で結果が出たからといって、フレンチで勝てる保証はない。ベストを尽くすことだけに集中したいです」

 自信と初心をブレンドしつつ、18歳のマルタ・コスチュクの待つ、ローランギャロス初戦に向かう。

文●内田暁

【PHOTO】日比野菜緒のフォアハンド『30コマの超分解写真』
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