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国内テニス

ベッカーを破った奇跡の裏には、もっと多くの奇跡の連続が!~石井弘樹【プロが憧れたプロ|第10回】

渡辺隆康(スマッシュ編集部)

2020.10.25

97年ジャパンオープンでベッカー/クーネンを破った石井/小野田ペア。「勝った瞬間は震えが止まらなかった」と石井。写真提供:石井弘樹

97年ジャパンオープンでベッカー/クーネンを破った石井/小野田ペア。「勝った瞬間は震えが止まらなかった」と石井。写真提供:石井弘樹

 有明コロシアムでベッカーと対峙した石井は「ウォームアップの相手がベッカーで、めちゃくちゃビビった」と振り返る。しかし試合に入ると「もし勝てば、みんながずっと思い出してくれる。死んでも勝とう!」と一念発起。普通にやっても勝てないからと、小野田のリターンが返ると100%ポーチを仕掛け、「最初から最後までハッタリ」でぶつかっていった。

「向こうも舐めてたんでしょう」と石井は言うが、ダブルスは流れに乗ってしまえば、実力差など簡単にひっくり返る。第2セットでマッチポイントを握られながら切り抜け、1-6、7-6、5-4で迎えた石井のサービスゲーム。「40-15になって手が硬直しちゃって、トスが上がらず、10回くらいやり直した」という緊張の中、石井はサービスダッシュから一か八かのハーフボレーをストレートに決め、大番狂わせを完成させた。
 
 勝った瞬間は「震えが止まらなかった」という石井。勝利以外にもう1つ、彼にはうれしかったことがある。それはベッカーの前でダイビングボレーをしまくったことだ。

「実はベッカーのマネで、よくダイビングの練習をしていたんです。本人の前で披露できるなんて感無量。落ちてもぜんぜん痛くなかった!」

 最後までイケイケで突っ走った石井。彼のテニス人生において最も輝いていた瞬間が、この年のジャパンオープンだったろう。石井/小野田は2回戦で第7シードのラフター/ギメルストブに敗れるが、それもフルセットの接戦だった。

取材・文●渡辺隆康(スマッシュ編集部)

【PHOTO】石井が憧れてマネをした、ベッカーのサービス分解写真

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