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国内テニス

加藤と日比野、26歳の誕生日を迎えた2人が明かす、テニス選手としての理想と現実

内田暁

2020.12.06

年始の全豪オープンの際は、現地で共に食事を楽しんだ加藤(中央)と日比野(左)。右は元プロテニスプレーヤーの森上亜希子さん。写真:内田暁

年始の全豪オープンの際は、現地で共に食事を楽しんだ加藤(中央)と日比野(左)。右は元プロテニスプレーヤーの森上亜希子さん。写真:内田暁

 周囲が加藤に対して抱くであろうイメージと、自分の知る友人の実像とのギャップは、付き合いが深くなるほどに、一層浮き彫りにもなっていく。

「コート上の彼女は気が強く見えるけれど、繊細で情に厚く、人のことをよく考えているなって思います。
 あと、努力する姿は人に見せないけれど、実は陰ですごく頑張っていることは、なんとなく察することが出来ます。でも、彼女が自分から『これだけトレーニングや練習をやっている』と言うことは、絶対にないですね。
 人間関係に関しては、裏表がない。表層的には仲良くても裏で陰口を言うような人も居るけれど、彼女はそういうところがないので良いなって思いました」

 裏表がない……という性分は、加藤が日比野に抱く印象でもあり、二人をつなぐ共通項でもあるのだろう。

「だんだん大人になるにつれて、嘘ついたり、社交辞令を言う人や機会も増えていくと思うんです。でも菜緒にはそれがなくて。全部正直に言ってくれるので、それが仲良く続いている理由かな」

 時には、自分からは他者に言いにくいことも、日比野が察して代弁してくれることもあるという。「そういう時は、凄く助かります」と加藤は続けた。

 そのように共有する資質も多い二人だが、26歳という年齢とテニスキャリアについて問うた時、返ってきた声のトーンには、かなり異なる響きがあった。それは、各々のランキングや現在地が生む、反響音の差異だろう。
 
「25歳くらいで結婚すると思っていたので、そこは大きな脱線ですね。テニスに関しては、もっとうまく行くものかなと思っていました。ランキングがすべてなので……もっと上に居たかったですね」

 10年ほど前に描いていた26歳の未来像と、実像の差は――?
 そうたずねた時の、これが加藤の返答である。

 プロになって、8年。キャリアの折り返し地点を過ぎ、終盤に差し掛かってきたとの思いもある。ならば今の彼女は、自分のキャリアの終着点を、どのあたりと見定めているのだろうか?

「自分のキャリアハイを……ランキングとしても成績としても、そこを上回れたら、逃げなかったなって思える。シングルスでもう一度グランドスラムに出たら、ちゃんと戦ってきたんだなって思えそうじゃないですか。そこまで行ったら、もっと続けたいと思うかもしれないし……。そこに行かない限り、見えないものがありますね」

 自分と対話するかのように、彼女はポツリポツリと想いを紡いだ。

 対して日比野が今見ているのは、加藤が「そこに行かない限り、見えないもの」と予期する景色かもしれない。

「感覚的には、やっとスタートラインに立った感じです。今までは準備期間で、ツアーでの苦しいことも経験し、なんとなく全体像が分かったところで『ここからどうする?』って。プレーもまだまだ、こんなところに伸びしろがあったんだって気付かされることが多い。
 今までは、この技術でここまで来たんだからと思っていたけれど、練習重ねて、まだまだ伸びるじゃんって思えているので、それが楽しいです。
 感情の浮き沈みも少しずつ減ってきて、周りを見る余裕が出てきた。今26歳になって、世界の見え方が全然ちがうなって……それが、おもしろいなって思います」

 26歳の現在地を、日比野はそう俯瞰した。
 
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