「自分のプレースタイルをこうしたいなというのは、あります。やりたい思いはあるけども、自分のテニスの調子だったり自信だったり、コンディションだったりコートサーフェスや風とか……そういうのもいろいろ関係してくるので、やりたくても出来ないことはある。メンタルスポーツでもあるので、自信やメンタルの持って行き方によって、なかなか出来ないときもあります」
理想と現実との間で抱く葛藤を率直に吐き出した錦織は、「メンタル的に(目指すプレーを)出来るようにもっていくのが、どちらかというと試練かな……」と、自分に問いかけるように言った。
目指す地点と、自身の現在地――その2つの点を結び進むべき道を見定めるべく、錦織は一昨年末、新たな水先案内人を傍らに招いた。それが、新コーチのマックス・ミルニー。ダブルス元世界1位、シングルスでもウインブルドンベスト8などの実績を持つ、サーブ&ボレーの名手である。
同じIMGアカデミーを拠点とするミルニーは、錦織にとって兄貴分的な存在でもあった。その巨躯とアグレッシブなプレースタイルから「ビースト(野獣)」の通り名で知られたミルニーだが、彼の冷静かつ知的な佇まいと面倒見の良さは、過去にIMGアカデミーに留学した多くの日本人選手たちも証言していた。
実際に錦織のコーチとしてベンチに入っている時も、熱のこもった視線と声を送りながらも、手にしたノートに淡々とメモを書き込んでいた。
錦織も、コーチとしてのミルニーの特性を次のように語っている。「怒られたことはないです。本当に冷静なんですよ、マックスは。導いてくれるので、話し合いが多い分、答えを見つけやすいです」そしてそれら話し合いの中で、新コーチから教わっていることとは、やはりネットプレーだという。
「やっぱりネットプレーが一番うまい選手なので、いろいろなヒントを教えてもらっています。今まで意識してこなかったことだったり、ネットに出るタイミングだったり。今までなかった考え方の共有もあったので。ボレーの技術も、今まで聞いたことのないちょっとしたヒントを教えてもらえているので、すごく充実した感じでやっています」
単なる戦績という意味では、本人のなかでも、昨季は物足りなさが残っただろう。それでも歩む道の足元の確かさが、全仏2回戦で敗れてなお、錦織の目に闘志と自信の光が宿っていた理由だ。
あの頃まだ見えていなかった、30歳を過ぎた自分。その不透明だった未来に立った今、錦織は「改善できるところがあるのは楽しみ。新たな目標をたくさん掲げて達成したいと思います」と、これから出会う自分に期待を膨らませている。
文●内田暁
理想と現実との間で抱く葛藤を率直に吐き出した錦織は、「メンタル的に(目指すプレーを)出来るようにもっていくのが、どちらかというと試練かな……」と、自分に問いかけるように言った。
目指す地点と、自身の現在地――その2つの点を結び進むべき道を見定めるべく、錦織は一昨年末、新たな水先案内人を傍らに招いた。それが、新コーチのマックス・ミルニー。ダブルス元世界1位、シングルスでもウインブルドンベスト8などの実績を持つ、サーブ&ボレーの名手である。
同じIMGアカデミーを拠点とするミルニーは、錦織にとって兄貴分的な存在でもあった。その巨躯とアグレッシブなプレースタイルから「ビースト(野獣)」の通り名で知られたミルニーだが、彼の冷静かつ知的な佇まいと面倒見の良さは、過去にIMGアカデミーに留学した多くの日本人選手たちも証言していた。
実際に錦織のコーチとしてベンチに入っている時も、熱のこもった視線と声を送りながらも、手にしたノートに淡々とメモを書き込んでいた。
錦織も、コーチとしてのミルニーの特性を次のように語っている。「怒られたことはないです。本当に冷静なんですよ、マックスは。導いてくれるので、話し合いが多い分、答えを見つけやすいです」そしてそれら話し合いの中で、新コーチから教わっていることとは、やはりネットプレーだという。
「やっぱりネットプレーが一番うまい選手なので、いろいろなヒントを教えてもらっています。今まで意識してこなかったことだったり、ネットに出るタイミングだったり。今までなかった考え方の共有もあったので。ボレーの技術も、今まで聞いたことのないちょっとしたヒントを教えてもらえているので、すごく充実した感じでやっています」
単なる戦績という意味では、本人のなかでも、昨季は物足りなさが残っただろう。それでも歩む道の足元の確かさが、全仏2回戦で敗れてなお、錦織の目に闘志と自信の光が宿っていた理由だ。
あの頃まだ見えていなかった、30歳を過ぎた自分。その不透明だった未来に立った今、錦織は「改善できるところがあるのは楽しみ。新たな目標をたくさん掲げて達成したいと思います」と、これから出会う自分に期待を膨らませている。
文●内田暁