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海外テニス

【2018年全米決勝プレーバック】全てはここから始まった。20歳の大坂なおみが女王セレナを破りグランドスラム初制覇〈SMASH〉

内田暁

2021.02.18

パワフルにして精密、そして忍耐強いプレーが、20歳の大坂をグランドスラム女王の座へと導いた。写真:THE DIGEST写真部

パワフルにして精密、そして忍耐強いプレーが、20歳の大坂をグランドスラム女王の座へと導いた。写真:THE DIGEST写真部

 最初のポイントを大坂がリターンで奪うと、重圧を覚えたセレナは、2本連続でダブルフォールトを犯しブレークバックを許した。自分への苛立ちで、ラケットを叩き折るセレナ。すると先に取られていた“コーチングバイオレーション”と合わさり、セレナにポイントペナルティが与えられた。

 納得いかぬセレナは主審に激しく抗議し、客席からは大ブーイングが沸き立つ。それでも淡々とプレーを続けた大坂が、3連続サービスポイントでゲームキープ。さらにはウイナーを連発し、続くゲームもブレークしてみせた。

 一度は奪い取ったと思った主導権を、奪い返されたセレナの怒りは尋常ではない。「あなたは私からポイントを奪った。泥棒!」と主審を激しくなじった時、3度目のバイオレーションと共に、ゲームペナルティがセレナに与えられた。

 セレナはさらに抗議を続け、ブーイングがアリーナを鳴動させる。その異常なる空気の中、大坂は何事もなかったかのように、最後のサービスゲームに向かった。
 
 そして迎えた、チャンピオンシップポイント――、センターに来ると読んだセレナの逆を突き、大坂のサービスがワイドに刺さる。その瞬間、優勝者は目元を隠すように、バイザーのつばをグッと下げた。

 セレモニーでは、セレナに下された処置に納得いかぬ観客が、大会関係者たちにブーイングを浴びせかける。だが、「こんな結末になってごめんなさい」と謝罪する新女王のあまりに無垢な涙が、殺伐とした空気を浄化した。

 涙に濡れた目に戸惑いの色を浮かべ、大坂がトロフィーを頭上に掲げる。幾度も見た夢の像はこのとき現実と重なり、降り注ぐ万雷の拍手は、暖かな祝福の音を奏でていた。

◆2018年全米オープン決勝
大坂なおみ[6-2 6-4]セレナ・ウィリアムズ

取材・文●内田暁
 
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